いわゆる国内のパソコン発売サイクルでは「夏モデル」真っ盛り。各メーカーが最新機種でしのぎを削るが、言ってしまえば既存のカテゴリーの寡占的な争いだ。着実な進歩はあっても、どれもドングリの背比べのようで、わざわざ紹介したくなるような製品は見あたらない。そうしたなかで注目されるのは、やはりASUS(アスース)のEeePC(イーピーシー)が切り開いた低価格モバイル・ミニノートPC分野だろう。これもまたドングリのひとつには違いないが、新種である。新たなメーカーの参入が続き、にわかにダイナミックで熱い市場が勃興しつつあるのだ。HPのハイパフォーマンスな「ミニノートPC」とはHP2133Mini-NotePC。スタンダードモデルは直販価格で59800円。CPUやバッテリーを強化した上位モデルは79800円だ。2008年5月21日、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)が「HP2133Mini-NotePC」を発表した。国内発売は6月上旬の予定だ。8.9インチの液晶に100GB超のHDD、OSはWindoswVistaで、CPUはVIA製。ホームページなどによれば、「ハイパフォーマンス」「フル機能」が売り文句だ。たしかにHP2133は僅か4GBのフラッシュメモリーSSDと7インチのディスプレイのEeePCよりは高性能だろう。しかし、現在市販されているほとんどのノートPCより低性能なはずだ。「PCのフル機能を凝縮した」(プレスリリース)わりには光学ドライブも付属しない。「ハイパフォーマンス」と引き替えに、値段はEeePCより高く、重量は重く、バッテリ(スタンダードモデル付属の3セルで2.3時間)の持ちは悪い。HP2133は現行EeePCとそれ以前の従来型モバイルノートの間に位置する製品と言えるだろう。従来型モバイルから、画面サイズを筆頭に、少しずつ削ってダウングレードさせたような趣がある。それでもコストパフォーマンスは残るが、新機軸はなく、エポックなPCではない。「Atom」製品いよいよ登場間近…国内メーカーはどこに?外観の写真が公開されたが、スペック等はまだ不明なデル製のミニPC。6月にはインテルの低電力な新CPU「Atom」(アトム)を採用したミニノートPC(ネットブック)が続々と登場する予定だ。とくに台湾のMSIから発売される「MSIWindNotebook」は、予定価格が400~500ドル程度と安いこと、国内発売が有力なこともあって、期待を集めている。その他、細かなスペック、国内発売の有無等の詳細は不明ながら、Acer(エイサー)や世界最大手のPCメーカー、Dell(デル)もこの分野に参戦予定だ。本家本元のASUSも6月上旬発売の「Atom」ノートブックでライバルを迎える。ベースになるのは4月に発表されたEeePC900(国内未発売)で、CPU関連以外の構成はほぼ同じになると見られる。画面サイズが8.9インチに拡大し、メモリが増えるなどの変更がなされた現行900は新しいシャーシに古いエンジンを乗せた折衷モデルのようなもの。国内未発売なのも新型エンジン(「Atom」)待ちゆえなのだろう。「Atom」でますます注目を浴び、加速しそうな低価格ミニノートPC市場。ところで、ここには国産主要メーカーの名前は出てこない。これまで高性能な小型軽量モバイルノートを高価格で提供してきた国内メーカーは、この新たな市場に目を瞑り、沈黙し続けるのだろうか――。
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