聴くもの圧倒するヴォーカル 染みる新人「干場かなえ」

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『アズキイロ』
干場かなえ/2008年7月16日発売
VICL-36427/1260円
ビクターエンタテインメント


   音楽を構成するファクターで、最も重要なものはなにか? 人それぞれにその解はあるのだろう。なになにと答える事は難しい。音楽の三要素はリズム、メロディ、ハーモニーといわれるが、使われる楽器の音質、歌という声、音楽を聴くシチュエーション、ライブなのかメディアなのか、それこそもっと詳細に解は存在するのだろう。

   音楽の送り手と受けてという立場でも異なるのは当然だ。その日の体調と答える人もいるだろう。馬鹿馬鹿しいと思う人もいるだろうが、音楽に関わる仕事をし始めた頃から、頭から抜けない疑問のひとつだ。

   もうひとつある。聴き手を想定しない音楽は成立するのか? ということ。基本的には成立する。例えば、人っ子一人いない草原で、口をついて出るメロディがあるとする。それは、歌うその人にとってのカタルシスでもあるだろうし、そこにいるという存在証明にもなるだろう。

   だが、他人が聴く事のない音楽は、風呂場の鼻歌と同じで意味があるとは思えない。カラオケで一人歌う行為は、カラオケ屋が儲かるということはあるにせよ、カタルシス、歌がうまくなりたい、という意外に意味はない。風呂場の鼻歌と同じだ。

   表現という言葉がある。音楽という表現。この立位置を意識した瞬間に、音楽は成立するように思える。それは言葉を変えれば、聴き手としての他人を意識する事でもあるだろう。

   音楽を聴くとき、こうした疑問に答えている音楽か否か、常に意識しながら聴いている。音楽の送り手が意識するかしないかは問題ではなく、聴く側として、その音楽の送り手がどこにいるかを判断している。

   干場かなえという新人がいる。彼女の歌の力は本物だ。聴くものを圧倒するヴォーカル力がある。デビュー曲「アズキイロ」は、ミディアムテンポのバラードだが、干場の言葉がいつまでも耳朶に残る。

   「朝目覚めるのはあなたがいるから」……染みるな……。歌のうまい人はたくさんいるけれど、彼女のように歌える人は少ない。聴いているとなにか体にまとわりついた薄皮が剥け落ちていくようだ……。


【アズキイロ 収録曲】

01 アズキイロ
*名古屋テレビ制作16局ネット「ラブちぇん」5~6月度エンディングテーマ
02 Oh We Are!
03 夢追人
04 アズキイロ(Back Track)


◆加藤 普(かとう・あきら)プロフィール
1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70〜80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。

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