カントリー大御所とジャズの重鎮「奇跡のセッション」

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『スターダスト / Two Men With The Blues』
ウィリー・ネルソン&ウィントン・マルサリス
TOCP-70541/2500円
2008年7月23日発売
ブルーノート・レーベル/EMIミュージック・ジャパン


   1950年代に日本へ流れ込んできたアメリカン・ミュージックといえば、後にフォークソングを生み出すカントリーが主流だった。ラジオを抱えて、FENから流れるスリー・ハンク(ハンク・ウィリアムス、ハンク・トンプソン、ハンク・スノー)等のカラッとしたナッシュビル・サウンドと呼ばれた音に耳をそばだてた。

   テキサス生まれのウィリー・ネルソンはその頃すでにカントリー歌手としての活動を始めていたが、世界的にその名を知られるのは70年代に入ってからだった。ヒッピー・ムーブメントに影響を受けたブルージーな作風は、保守本流のナッシュビルからは「アウトロー」と呼ばれ、カントリー・ミュージックの枠から外された感もあった。だが、その頑固でありながらフレキシブルな音楽性は、多くのミュージシャンの敬愛を受ける。「スターダスト」など多くのヒット曲を生み、農民救済イベント「ファーム・エイド」の主催者としても名高い。

   一方、ニューオーリンズに生まれ、いまやジャズ界の重鎮となっているウィントン・マルサリスは、ジャズのみならずクラシックの演奏家としても名高いトランペッター、作・編曲家。80年代にはジャズ、クラシック両部門でグラミー賞を獲得、90年代にはリンカーン・センター・ジャズ・オーケストラを率いてのジャズ・オペラ作品『ブラッド・オン・ザ・フィールズ』で、ジャズ界初のピューリツァー賞を獲得もしている。

   どうした塩梅か、この2人が共演したCDがこれ。レコード会社は「奇跡」という言葉を使っているが、まさに奇跡。どこに接点があったのだろうか? 2人は07年、リンカーンセンターの「ローズ・ホール」でブルースとスタンダードを演奏するコンサートで共演、その流れの中から生まれたCDのようだ。

   控えめな風のようなウィントンのトランペット、渋いと言うよりはまるで自然界の音のようなウィリーのヴォーカルが、見事に補い合い、深みのあるCDを作り上げている。ブルースとスタンダード、なんともゆったりと、感動的な1枚。


【スターダスト 収録曲】
01. ブライト・ライツ、ビッグ・シティ
02. ナイト・ライフ
03. カルドニア
04. スターダスト
05. ベイジン・ストリート・ブルース
06. ジョージア・オン・マイ・マインド
07. レイニー・デイ・ブルース
08. マイ・バケッツ・ゴット・ア・ホール・イン・イット
09. エイント・ノー・バディーズ・ビジネス
10. ザッツ・オール
BONUS TRACK
11. ドント・ゲット・アラウンド・マッチ・エニィモア


◆加藤 普(かとう・あきら)プロフィール
1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70〜80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。

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