2024年 3月 28日 (木)

高橋孝「初恋草」が拓く 新しい日本のポップス

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「初恋草(はつこいそう)」
「初恋草(はつこいそう)」

「初恋草(はつこいそう)」
高橋 孝(タカハシコウ)/9月25日発売
TKCA-73349  2200円
徳間ジャパンコミュニケーションズ


   昭和30年代前半まで、ラジオが大きな情報源だった。学校でゲルマニウムラジオ(鉱石ラジオというのもあった)を組み立てたりして(少年雑誌の付録にもあったような気がする)、安上がりだが宝のようなマイラジオで、聴こえない音を必死で聴いていた記憶がある。当時はラジオよりラヂオと表記することが多かったような気もする。家の神棚の隣には立派なラヂオが鎮座ましまして、なぜかNHKばかりがかかっていた。民放はもう少し後になって、深夜放送というものが登場してブレークするまでは、子供の手では扱ってはいけない代物だった。スポーツ番組はなんといっても初代若乃花、栃錦の取り組みを頂点とする相撲だった。それ以前の鏡里やら大内山の取り組みもよく聴いた。

   そんな時代に、先週紹介したうめ吉姐さんが得意とする都々逸や、端唄、小唄に清元、浪曲の類が、昭和歌謡の間あいだに流れていた。好き嫌いは関係なく、耳に流れ込んできた。だからいまでも覚えているフレーズがあったりする。見よう見真似というか聴きよう聴き真似で、こぶしを回したりもした。そんな我々世代が耳馴染んでいた音も、昭和40年代後半には、ほとんど聴くことがなくなった。だからすっかり忘れていたのだが、記憶の中からそうした音を引っ張り出してくれたのが、高橋 孝の「初恋草」だった。当時の音とはまったく違うポップスなのだが、その歌唱法、バックで流れる三味線の音が、懐かしさではなく新しい音として耳に届くのだが、昔の記憶を呼び覚ます。

   ひょっとすると、これは新しい日本の歌謡の誕生ではないかとまで思わせてくれる。我々世代にはそう思えるのだが、おそらく10~30歳代の人たちには、まったく新しい音に聴こえるかもしれない。そうあって欲しいとも思う。作詞・曲は、小椋 佳。ミニアルバム中の全6曲とも良い。


【初恋草 収録曲】
01 はなむけに
02 初恋草
03 憤り
04 ゆびきり
05 真っ新な台本(アルバムバージョン)
06 逢いたくて(アルバムバージョン)



◆加藤 普(かとう・あきら)プロフィール
1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70~80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。

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