2024年 4月 19日 (金)

芸人になりたけりゃ「お笑い学校」に行け!

   芸能界は空前のお笑いブームに沸いているが、芸人を育成する「笑いの学校」の門を叩く人も増えているようだ。そのうちの一つ、東京のワタナベコメディスクールをたずね、芸人養成所の様子をきいた。

仕事や勉強をしながら「お笑い」が学べる学校

テンゲンの中島正晴さん(左)は大学時代に鍛えたボディで「筋肉芸人」を目指す
テンゲンの中島正晴さん(左)は大学時代に鍛えたボディで「筋肉芸人」を目指す

   ワタナベコメディスクールは、大手芸能プロダクションのワタナベエンターテインメントが2004年10月、東京・恵比寿に開設した学校だ。「お笑いタレント」「バラエティタレント」「放送作家」の3つの専攻ごとに、現役のお笑いタレントや放送作家が講師になって、笑いの基礎を伝えていく。

   授業は平日の夜や週末に設けられているため、仕事や学業と並行して通うことができる。平日はアルバイトをしながら学校に通う「芸人の卵」が多いが、なかには現役の東大生もいるのだという。

「東大1年の女の子で、入学と同時にうちのお笑いタレントコースにも通い始めました。まったくの未経験で入ってきたので、これからの可能性に期待したいと思います。」

と、ワタナベコメディスクールの坂本拓也主任は語る。

   ほかにも、北京五輪メダリストの練習相手をつとめていた女子柔道選手や47歳の英語塾講師など、コメディスクールに集まってくる生徒たちのプロフィールはさまざまだ。入学希望者の数も年々増えているが、その背景には昨今のお笑いブームがある、と坂本主任は言う。

「テレビではお笑い番組が多いですし、そういった番組を見てお笑いを目指す人が増えてきています。最近はスクールに入ってプロになるというのがスタンダードになってきていることもありますので、スクールに興味を持つ人が増えているんだと思いますね」

「教師の道」を捨てて「芸人の道」へ

さむらい侍の伊藤靖さん(右)は「同期の仲間がたくさんできて良かった」と語る
さむらい侍の伊藤靖さん(右)は「同期の仲間がたくさんできて良かった」と語る

   スクールに通う生徒は20代半ばの社会人経験者も多いというが、大学を出てすぐにお笑い業界を目指す者もいる。人並み外れた"筋肉"を生かした笑いがウリのコンビ「テンゲン」の中島正晴さん(25)と上簗裕尚(かみやな・ひろたか)さん(22)もそうだ。

   二人の共通点は、教員免許をもっていること。しかし教師の道ではなく、お笑いの道を選んだ。大学4年のとき、周りの友人たちが一般企業への内定を決めていくのをよそに、コメディスクールに通い始めたのだ。

「ここはひとクラスの人数が少なめで、ネタのダメ出しも個別でしっかりしてくれる。未経験者なので、親身になって教えてくれるところがいいと思った」

と上簗さん。中島さんは

「小学校ぐらいからお笑い芸人になりたいという夢があった。親にムリだと言われていたけど、たまたま雑誌でスクールの募集を見て、『いいタイミングなのかな』と思って入学することにしました。勢いですよ(笑)」

   一方、テンゲンの二人とは違い、すでに芸人としての一歩を歩み出していたものの、もう一度「お笑いの基礎」を学び直すためにスクールに通う者もいる。テンポのいいボケとツッコミが持ち味の「さむらい侍」の二人、イトキンこと伊藤靖さん(25)と北岡祐樹さん(25)がそのパターンだ。

   関西系の芸人養成学校を卒業してフリーでライブ活動をしていたが、ワタナベコメディスクールの関係者に声をかけられたのがきっかけで、スクールに通うことになった。

「毎週あるネタ見せでは、現役の放送作家さんや芸人の大先輩が見てくれる。感性が新しいし、『テレビだったら見せ方はこうしたほうがいい。ライブだったらこうしたらいい』と分けて教えてくれるのが良かった」

と伊藤さんは振り返る。

   二人はもともと別のコンビで活動していたが、スクールに通い出す3ヶ月前に新たに「さむらい侍」を結成した。最初はコンビの方向性が決まっていなかったが、スクールの講師にアドバイスをもらうことで"壊れていく漫才"という彼らのカラーが固まっていったという。

「ライブに出ることでネタの精度が上がっていく」

「学内公演の舞台を経験したことで自信がついた」という東麻里さん
「学内公演の舞台を経験したことで自信がついた」という東麻里さん

   コメディスクールの特徴の一つは、毎月開かれる在校生ライブだ。お笑い芸人の卵たちは、観客の厳しい視線と評価にさらされることで自らの実力を知り、成長していく。

「芸人は人に見られることが大切な職業なので、ライブに出ることでネタの精度も上がっていくもの。ライブで人前に立つという環境をできるだけ提供することにこだわりをもっています」

と、坂本主任はライブの重要性を強調する。

   そんな在校生ライブは本来「お笑いタレントコース」の生徒たちのためのものだが、「女性タレントコース」に籍を置きながら、お笑いライブに挑戦する猛者もいる。「青木さやかさんみたいなバラエティタレントになりたい!」という東麻理さん(24)もその一人だ。

   高校までは新体操をしていて、日本代表に選ばれたこともある実績の持ち主。その経験を生かして舞台でジャグリングを披露したりしていたが、活躍の場をもっと広げたいと考え、ワタナベコメディスクールに通うことにした。

   「人を笑わせるのが好き」という東さんだが、女性タレントコースで学ぶのは歌やダンス、演技で、お笑いは専門外。ライブの前は緊張のあまり胃が痛くなった。

「でも、こんなことで負けていちゃいけないと思ってがんばった。おかげで、どのようにネタ作っていけば見ている人が面白いと思ってくれるのか、お笑いのネタの作り方を学ぶことができました」

   東さんやテンゲン、さむらい侍は08年9月にスクールを卒業して、新たな一歩を踏み出した。

   ※ワタナベコメディスクール

姉妹サイト

注目情報

PR
追悼
J-CASTニュースをフォローして
最新情報をチェック
電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中
カス丸

ジェイキャストのマスコットキャラクター

情報を活かす・問題を解き明かす・読者を動かすの3つの「かす」が由来。企業のPRやニュースの取材・編集を行っている。出張取材依頼、大歓迎!