『姿』島崎智子/11月19日発売/MDCL-1490 3150円MIDICreative70年代は、学生運動の余熱が冷めやらぬ、まだまだそれほど豊かでもなく、人々も笑うより考え込む表情の方が多かった時代。音楽は時代を色濃く反映するもので、男どもはかぐや姫を筆頭とする叙情派フォークの一群と共に、高田渡や、友部正人などメッセージ色の強いフォークの一群もまた大勢いた。女性ミュージシャンも、フォーク、ニューミュージックというカテゴリーの中に、さらっとした五輪真弓、谷山浩子、いるか等がいた一方で、中島みゆき、カルメン・マキ、森田童子、山崎ハコなどの強烈な個性をもったミュージシャンも大勢デビューした。そうしたミュージシャンがいた一方で、とてつもないローカリズム、とてつもない存在感で他を圧倒したミュージシャンが何人かいた。三上寛、友川かずき等だ。彼等に共通するのは、音楽は誰のものでもない「俺のもの」という強烈な主張だ。「俺が歌って何が悪い」というくらいの自己主張があった。決して上手くない歌とギター……それはどろどろとした怨念のようでもあり、いっそ小気味良かった。大阪から生まれた島崎智子の歌を聴いていて、思わず友川かずきを思い出してしまった。似ているというのではなく、圧倒される感覚が同質なのだ。そうだ、音楽というのは、こういうものでもあるんだと、改めて思った。そういう意味では宮古島の下地勇の音もそうだった……。音魂という言葉は存在しないが、存在しても良い。もし彼等の音を敢えて文字にするなら音魂だろうか。島崎智子はすでにMINIALBUMを3枚(05年「mebalance」、06年「GoodLuck」、07年「"it"」)発表しているが、こちらも是非聴いてみることをお勧めしたい。21世紀の腐り始めた日本という社会に生きる、女性の胸の奥の奥がピアノの音に乗って顕れてくる。【姿 収録曲】1.8-Hit2.インターネット3.ポストにポン4.わからんちん5.この冬いちばん寒い朝6.部屋にて7.嫌われ上手8.おかしい9.お邪魔します10.ちいさいちいさい11.歩け12.territory!
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