「高校3年生」のバンドネオン奏者 三浦一馬が奏でる「聴くタンゴ」

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三浦一馬
『タンゴ・スイート』
VICC-60689
3000円
3月18日発売
Victor


   バンドネオンという楽器を知る人は、それほど多くない。だが、その音色はきっとどこかで聴いている。そう、アルゼンチンタンゴで使われる楽器だ。膝の上に乗せてアコーディオンのように、蛇腹のついた胴に空気を取り込んだり噴出したりして、取り付けられたリードを振動させ音を出す。見たとおりアコーディオンの一種だが、小振りで、ことさらにアルゼンチンタンゴの伴奏に使われてきた。その音色はどこか哀愁を帯び、激しい感情の起伏をも見事に表現する。

   アルゼンチンタンゴと言えば、「リベルタンゴ」と言う作品で名高いアストル・ピアソラ(1921ー1992年)の名を思い浮かべる人も少なくないだろう。アルゼンチンの誇るモダンタンゴの創始者、作曲家、演奏家だ。ピアソラのタンゴは「踊れないタンゴ」と言われる。聴くタンゴ。そしてその革新性故に「ピアソラの後にタンゴの未来はない」とまで言われた。

   ピアソラに並び、匹敵する演奏者としてネストル・マルコーニがいる。このマルコーニの弟子に、日本人がいる。三浦一馬だ。

   昨年イタリアで開催された「国際ピアソラコンクール」で、初出場、最年少での準優勝を遂げた。現在、高校3年生の18歳。まだあどけない表情の残る少年なのだが、一度バンドネオンを弾き始めると、一変する。そこにはこれまで日本人が到達し得なかったバンドネオンの音がある。オルケスタ・ティピカの一員の音でしかなかったバンドネオンの音ではない、タンゴの伴奏以外の可能性を孕んだ楽器としての音。クラシック、ジャズ、ポップスへの展開の可能性を秘めた音。

   三浦は10歳で、楽器としてのバンドネオンと出合い、それ以降バンドネオン一筋に研鑽してきた。自分の演奏をCDに収め、そのCDを手売りした売り上げで、アルゼンチン留学まで果たしている。一途なのだ。

「ピアソラは形式には拘泥せず、ロックやジャズの要素を取り入れ、踊るというよりジャンルにとらわれない聴くタンゴを作り上げました。モダンタンゴを基本に、僕もさまざまなジャンルの音楽にアプローチしたい」

三浦はそう言う。

   日本という音楽的土壌は、意外にも他の国々よりもタンゴを受け入れてきた歴史がある。三浦の夢は叶いそうな気もする。なにより彼の演奏は優れている。騙される勇気があれば、是非聴いて欲しい。騙されたその先に、音楽の芳醇な地平が広がることは間違いない。

【タンゴ・スイート  収録曲】
1.想いの届く日
2.さよならのワイン
<タンゴ組曲>
3.第1楽章-デチーソ
4.第2楽章-アンダンテ
5.第3楽章-アレグロ
6.コラレーラ
7.夏が来るとき
8.忘却
9.ピアソラ・セレクション
10.カルメン幻想曲
11.タンティ・アンニ・プリーマ


◆加藤 普(かとう・あきら)プロフィール
1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70〜80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。

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