イングリット・フジコ・ヘミング『永遠のカンパネラ~ザ・ベスト・オブ・イングリット・フジコ・ヘミング』UCCD-1241(通常盤)3000円4月8日発売ユニバーサル奇跡のピアニスト、と言われるフジコ・へミング。幼い頃から天才といわれた彼女だが、花開いたのは1995年に、母の死を機に住み慣れたヨーロッパを離れ日本に戻ってから。1999年2月11日にピアニストとしてのフジコさんの軌跡を描いたNHKのドキュメンタリ―「フジ子~あるピアニストの軌跡~」が放映され、一気に表舞台に。筆者も何気なくその番組を見た。定かではないが、帰国後、養護施設や老人ホームなどでピアノを披露していたフジコさんの活動に触発されて作られたような番組だった記憶がある。だから、まともに1曲を通して聴かせてはもらえなかったような気もする。そしてそのフジコの、断片のような演奏を聴いて驚愕した一人だ。フジコさんのピアノの音には、揺るぎのない芯が感じられ、それは彼女が生きてきた軌跡そのものの音、そんな気がしたのだ。異国の地で国籍を失い、聴覚も失うなどの失意と絶望の淵にあっても弾き続けた彼女のピアノの音には、逆に、絶望や希望も介在できない純粋な音楽と演奏者の関係があるようにも思う。このCDは、フジコさんが1999年に『奇蹟のカンパネラ』でメジャーデビューして10周年を記念して作られたベスト・アルバムだ。ヨーロッパの名門デッカで録音したアルバムの中から選曲されている。「ラ・カンパネラ」を皮切りに リスト、シューマン、グリーグ、ショパン、ドビュッシー、ベートーヴェンの作品を全13曲収録している。デビュー・アルバム『奇蹟のカンパネラ』は累積200万枚を超える、クラシックの音源としては異例というより"奇蹟"ともいえる売上を記録している。2000年には「第14回日本ゴールドディスク大賞クラシック・アルバム・オブ・ザ・イヤー」も受賞、翌01年も2年連続受賞。フジコ・へミングという稀有のピアニストの演奏には聴き入るしかない。決してエキセントリックにならずとも、豊かな情感は伝わるということが分かる。実は初回生産限定盤も出されている。今は手に入らないかもしれない。それはSHM-CD音源であり、その音はやはり圧倒的だ。しかも2DISKで全22曲収録されている。昨年の秋口から、既発アルバムをSHM-CD化した音源も順次発売されてきている。また、今年、自身のフジコ・レーベルも立ち上げるなど(年齢は書かないが)1932年生れとは思えない精力的な活動が続く。【永遠のカンパネラ~ザ・ベスト・オブ・イングリット・フジコ・ヘミング 収録曲】1.ラ・カンパネラ2.トロイメライ3.蝶々4.バラード第1番ト短調作品235.亜麻色の髪の乙女6.即興曲第4番嬰ハ短調作品66《幻想即興曲》7.ワルツ第9番変イ長調作品69の1《別れ》8.トルコ行進曲(《アテネの廃墟》から)9.前奏曲第15番変ニ長調作品28の15《雨だれ》10.ポロネーズ第6番変イ長調作品53《英雄》11.ハンガリー狂詩曲第6番変ニ長調作品27の212.喜びの島13.ピアノ協奏曲第1番ホ短調ソロ・ピアノと弦楽四重奏のための~第3楽章■初回生産限定盤 UCCD-9746 3800円 4月8日発売加藤晋
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