砂川恵理歌が試行錯誤する 「遺言」を曲にした「一粒の種」

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   2009年3月18日午前2時、NHKミッドナイトチャンネルで放映されたドキュメンタリー「一粒の種 ~遺言から咲いた命の歌~」が静かな話題となっている。

   癌(がん)で余命幾許もない一人の男性患者が残した遺言を、宮古島出身の看護師・高橋尚子さんが一篇の詩としてメールマガジンに発表した「一粒の種」。その後、同じ宮古島出身の歌手・下地勇が曲にしコンサートで歌っていたのだが、その歌を下地から引き継ぎ、やはり宮古島出身の女性歌手・砂川恵理歌がCD化した。

   介護職の経験がある砂川は、この歌を、コンサート以外でも全国の介護施設や学校を訪問し、大切に歌い続けている。遺言として残された「一粒の種」は、大きな希望の種となり、全国に広がりつつある。

   「一粒の種」を歌う砂川恵理歌に、話を聞くことができた。

(加藤晋)

「介護しながら歌っていました」

砂川さんは白が似合う
砂川さんは白が似合う

   ――介護の仕事をされていたそうですね?

   砂川 沖縄本島で、5年ほど続けていました。入所といって皆さんと一緒に生活をする施設での仕事でした。

   ――介護から、歌の世界に移るきっかけはなんだったんですか?

   砂川 元々、高校を卒業し歌手志望で東京に出ていたのですが、その時は結局4年ほどで沖縄に戻って、介護の仕事を始めました。介護しながら歌も歌っていました。ずいぶん悩みましたが、人に働きかけるという意味では、介護も歌うことも同じ意味のあることだと思い、歌に専念することを選びました。

   ――その時点で「一粒の種」という曲は?

   砂川 まだ出会っていません。06年にCDデビュー(よしもとアール・アンド・シーよりシングル「Heart Drops」をリリース)のチャンスを頂いて、07年にミニアルバム『笑(えみ)』、08年に2枚目のシングル「ひかり」(オペラ『トゥーランドット』の「誰も寝てはならぬ」に日本語歌詞を付けてカバー)を出し、その後に下地勇さんからこんな曲があるけれど歌ってみないかとお話を頂きました。実はお話を頂いた同じ時期に、私の従兄弟が若くして白血病で亡くなりました。本当になんというタイミングでこの曲と出会ったのかと、驚きと運命を感じて、素直に「歌わせてください」と言いました。CDは09年の2月に出しました。

   ――初めて「一粒の種」を歌い、それから歌い続けてこられて、なにか歌への思いも変化してきているのでは?

   砂川 歌い手として、こうして歌い続けることの出来る曲と出会えたことに感謝している気持ちは変わらないのですが、歌の大きさに、まだ自分の年齢、生きた経験が釣り合っていないと徐々に思い始めています。伝えたい気持ちはあるけれど、伝えることが大きくて、伝える方法も試行錯誤している状態です。

   ――「Heart Drops」や「ひかり」などとはまったく異なった曲ですが、歌うにあたって心している点はなにかありますか?

   砂川 「一粒の種」は、私を通過点として、皆さんに橋渡しをするという気持ちで歌っています。そういう意味では、これまで私が歌ってきている曲とは違う、新しい私が生まれたような気がしています。私が歌うことで、聴いてくださった方が、今度は自分の歌として引き受けてくださるようになればな、とは思います。 ――歌うことと同時にチャリティー活動も始められたとか?

   砂川「Smile Seed Project」と題して、全国の学校や医療施設を中心にチャリティー・コンサートを開催しています。そこで花の種をプレゼントしたりしながら、一粒の生命を育むことの尊さなどを、皆さんと共に学びあっていければと思っています。訪問先での体験や感想を、自分のHPで報告させてもらっていますが、そうすることでまた何かが見つけられれば良いなと思います。

   ――これから先のビジョンは、何か思い描いていますか?

   砂川 続けるということは大変なことだと思っていて、歌うという事をずっと続けていけるように活動していければ......。「一粒の種」という楽曲も10年後に、良い意味で別の育ち方をしていると良いなと思います。

   ――このインタビューを読まれる皆さんに、メッセージをお願いできますか?

   砂川「一粒の種」という楽曲に出会えたことが心から嬉しいんです。私の名前は恵理歌ですが、両親が、歌が好きで歌に恵まれる子になって欲しいと願って付けた名前だそうです。そんな私が本当に素晴らしい歌に出会えて......。遺言を残された中島さんの思いが一粒の種となって、作詩者の高橋さんに届き、今度は作曲者の下地さんに届き、私に受け渡されたという事の大きさ、それを大切な生命の種として、皆さんに伝える役目を担えることが本当にありがたいと思っています。そしてなにより、この曲で私自身、人として成長させてもらっていることが嬉しいんです。そんな思いの詰まった歌です。是非聴いてみてください。

【インタビュー後記】

話を聞いた後で思った。砂川恵理歌という歌い手は、この「一粒の種」という楽曲を歌うべくして生まれた歌い手だと。もっとたくさんの話を聞いたが、エッセンスだけお伝えする。

この6月4日(木)に NHK教育テレビの全国ネットで「福祉ネットワーク ~一粒の種~」(20:00~20:29)が放映される。ドキュメンタリー「一粒の種~遺言から咲いた命の歌~」の続編にあたるような内容の番組だ。是非ご覧になって、このインタビューでは伝わらなかった部分を補っていただきたい。

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砂川恵理歌
「一粒の種」
YRCN-90057
1000円
09年2月18日発売
よしもとアール・アンド・シー

【一粒の種 収録曲】
1.一粒の種
2.寂寥


◆加藤 普(かとう・あきら)プロフィール
1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70~80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。

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