【J-CAST独占インタビュー】 『Echos』アリッサ・グラハム

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『Echos』

アリッサ・グラハム
『Echos』
OMCZ-1031
2625円
09年3月18日発売
オーマガトキ


   05年にアルバム『What Love Is』でデビューしたアリッサ・グラハム。デビュー作は、All About Jazzで<Best New Recordings of 2005>に選出され、Jazzizでは<Women In Jazz>選ばれるというこのうえないスタートを切った。2作目の『Echos』は、デビュー作のさらにその上をいく出来栄え。シンプルでジャジー&フォーキーなサウンドに透明感のある、少しだけハスキーがかったヴォーカルが心地よい。

   『Echos』のプロモーションも兼ねて来日したアリッサは7月14~16日まで丸の内のコットンクラブでライブを行ったが、14日にその歌声を聴いた。アルバムとは印象の異なるアグレッシヴとさえいえるパフォーマンスを堪能した。その中の1曲に、かのビリー・ホリデイが歌う予定だった曲と彼女がMCで語った曲があった。『Echos』にも収録されている「インヴォルヴド・アゲイン」がそれだ。50年もの間お蔵入りしていた曲だという。話を聞きたいと思った。 <加藤 普>

「自由な表現があるからミュージシャンは音楽をやれる」

「日本は最高!」と語るアリッサ・グラハム
「日本は最高!」と語るアリッサ・グラハム

―ライブの印象は?

アリッサ 素敵なライブでした。初めての日本でのライブでちょっと心配だったけれど、曲の合間で話したレコーディングの逸話や曲の説明を皆さん理解してくれて、皆さん優しくて。

―ステージとCDから、まったく別の印象を受けたが?

アリッサ ライブでは音が流れると、つい踊りたくなっちゃうの。スタジオでもライブ録音だったけれど、レコーディングってそれぞれがパーテーションで区切られて、観客もいないでしょ。自由もあまりないし。ステージだと観客からのリアクションなども含めて、新しい発見があったり、常に変化していて自由でつい反応してしまうの。

―ジャズではあるけれど、カントリーというかフォーキーな感じだ

アリッサ フォーキーと言って! 学校ではジャズを学んだけれど、ジョニ・ミッチェルやニール・ヤング、ボブ・ディランの音を聴いて育ったの。このアルバムをレコーディングした時も、ただジャズ・テイストだけではなくて、私を形作ってきた、影響してきたものを全て出したかったの。

―CDからも、サウンドや醸し出す雰囲気、アルバム・コンセプトも含めてボーダーレスな印象を受けた

アリッサ ありがとう! 音楽業界ってジャズならジャズとカテゴライズしたがるけれど、ミュージシャンは違うの。それが売り上げの役に立つかは別にして、自由な表現があるからミュージシャンは音楽をやれるのだと思うわ。

―ライブではCDの曲をほとんどやってくれたけれど、ポルトガル語の曲もやっていました。ポルトガル語は得意?

アリッサ 『Echos』のタイトル曲「エコー」と、「バタフライズ」の作詞をしてくれたブライアン・マッキャンは幼馴染で、ジョージタウン大学でブラジル史の教授をしているの。ポルトガル語はブラジルで少しは習ったけれど…そんな縁もあって日常会話程度のポルトガル語は話せるようになったわ。日本語よりも簡単ね(笑)。

―ボッサとサンバの魅力って?

アリッサ ブラジルのサンバ、ボサノバが素晴らしいと思うのはそこにブラジルという国がはっきりと見えること。ブラジルはクレイジーな混沌とした国で貧富の差も激しかったりするけれど、音楽はシンプルで美しい! 貧しさや混沌から脱する手段として音楽があるのかもしれない。そういう意味も含めて、私はブラジルの音楽が好きなの。

―ビリー・ホリデイが歌うはずだったという「インヴォルヴド・アゲイン」を歌うことになった経緯を教えて

アリッサ とてもラッキーな出来事。作曲者のジャック・リアドンは、フランク・シナトラやトニー・ベネットも手がけたことのあるアーティストで、バンドのダッグ(アリッサの夫でもあるダグラス・グラハム〔G〕)のお母さんのフロリダの家の隣に住んでいたの。1stアルバムを出した時に、それをお母さんがお隣のジャックに手渡してくれたんだけれど、ジャックは「僕はいつも正直な感想しか言わないよ。『他の仕事を探した方が良い』と言うような人間だから」とCDを受け取ったの。その彼が翌日お母さんの所に来て、私に電話をしたいと。私の声を聴いて「50年代に亡くなる直前のビリー・ホリデイのために書いて、ビリーがとても気に入っていた曲がある。レコーディングも決まっていたけれど、彼女が亡くなって結局歌われることもなく、50年もお蔵入りにしていた。その曲に陽の目を当ててくれないか」と言ってくれたの。私はビリーの大ファンだったから舞い上がりそうだったわ。ビリーのために書いた曲だから、彼女ならどう歌うのだろうと、彼女の心を歌わなければならない曲で、解釈にとても悩んだけれど、やっとレコーディングできるまでになったの。とても名誉な出来事だったわ。

―『Echos』にはポール・サイモン「アメリカ」、スティング「アイ・バーン・フォー・ユー」、ミシェル・ルグラン「ワンス・アポン・ア・サマータイム」のカヴァーと、オリジナル。ただ、あなた自身の曲がない。自分では曲を書かなかった?

アリッサ 書きましたよ! ただ今度のアルバムのコンセプトが固まってきた時に、どの曲を収録するか考えて、結局私の曲は入れなかったということ。多分次のアルバムには私の曲も入ると思うわ。

―最後に。日本の印象は?

アリッサ ホテルとライブハウスの行き来で、まだ何も見ていないけれど、会う人会う人皆良い人で。日本は人と人とがとても効率的に関わりあっていて最高。次に来ることばかり考えているわ(笑)。引っ越して来たいくらい!!

   ニュージャージー出身のアリッサ・グラハム。話を聞いた時の彼女は明るくパワフルでオキャンな印象だ。だが、アルバムの彼女からは深い精神性を感じる。どちらもアリッサ・グラハムその人。

   世界を旅した印象記とでもいうようなアルバム『Echos』には、愛が溢れている。是非、大人の歌を堪能して欲しい。

【Echos  収録曲】
1. アメリカ
2. ピクチャーズ・オブ・ユー
3. エコー
4. アルカンサス
5. マイ・ラヴ
6. バタフライズ
7. アイ・バーン・フォー・ユー
8. インヴォルヴド・アゲイン
9. ワンス・アポン・ア・サマータイム
10. カミング・ホーム
11. イザウラ


◆加藤 普(かとう・あきら)プロフィール
1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70~80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。

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