2024年 4月 21日 (日)

梶芽衣子「25年ぶり」歌手復帰 J-CAST独占インタビュー

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梶芽衣子
「女をやめたい cw 思い出日和」
シングルCD
TECA-12187
1200円
シングルカセット
TESA-12187
1200円
09年6月24日発売
テイチクエンタテインメント


   イントロ:梶芽衣子。1970年代を代表する女優、歌手。銀幕に映し出された彼女の姿に、どれだけの人々が心ときめかせたことだろう。かく言う筆者もその一人だった。活躍の場を銀幕からTVに移し、心の奥底の恨み辛み、思いを押さえ込むように歌う歌声も、久しく聴くことがなかった。

   梶芽衣子が25年ぶりに歌手活動を再開したと聞き、どうしても話を聞きたかった。目の前の梶芽衣子は、「あの頃」と少しも変わらずに、凛とした姿形で話をしてくれた。

   60年代半ばから銀幕(日活)で活躍していた梶芽衣子という女優。それが大ブレークしたのは日活の『野良猫ロック』シリーズ、東映の『女囚さそり』シリーズ、『修羅雪姫』シリーズなどのクールでありながら、時に見せる激しい感情表現を伴った演技による。時はまさに学園紛争の終焉とその残滓を引き摺っていた時代。複雑な思いを抱えた若者が、スクリーンの梶芽衣子の姿に同苦し同化し、力を得ていた。

「あの頃の私は、タイミングが良かったんだと思います。反体制運動が盛んで、学生運動が盛んな時代。『女囚さそり』なんて体制に反発して体制側をやっつけちゃう話ですから。かつて寺山修二さんが当時の私を『100万人の不幸な女を1人で演じている女優』『オールナイトの映画館に入ると梶芽衣子という女優が出てきて俺たちの気持ちを分ってくれる、語りかけて元気付けてくれた』と、表現されていた記憶があります」」

   梶芽衣子の歌には、他の歌い手からは感じられない心の奥底からの感情があふれ出ていた。だから誰もが、まるで自分の歌のようにギターを片手に、マイクを握り締め歌った。

「以前、北方謙三さんと対談した時に『あの頃のヒロインは完全に梶芽衣子で、闘争の現場には梶芽衣子のポスター、流れる曲は「恨み節」』とおっしゃってました(笑)」

   何十、何百という曲を歌ってきた梶芽衣子だが、80年代に入ると、銀幕から距離を置き、歌からも遠ざかる。

「ずっと私の役者としての居場所はアウトロー。でも段々と母親役とか普通の役を演りたくなるの(笑)。それがTVに活動の場を移した理由なんです。クエンティン・タランティーノが『キルビル』の中で私の歌を使って、その時に、レコーディングのオファーもありましたけれど、歌いたい曲もなかったし、エネルギーも要るし、歌はもう良いわと思って。だからあの時でもシーンとしてたんです。ところがある曲が私のそんな気持ちを変えてしまったんです」

新曲の歌い出し「抱いてよ~」

「ライブもやりたい」と梶さん
「ライブもやりたい」と梶さん

   25年ぶりに梶芽衣子に歌いたいと思わせた曲、それはなんだったのか?

「すぎもとまさと先生の『吾亦紅』を聴いたんです。即座に書いていただきたいと思いました。私は25年前に『霧雨ホテル』と『乾いた花』という曲を最後に歌手活動を中断したんですが、その2曲の作曲者は、杉本先生だったんです。でも『吾亦紅』のすぎもとまさとさんと最後の曲を書いてくださった杉本先生が、同一人物だなんて知らなかった!」

   この6月に25年ぶりの新曲「女をやめたい」が発売された。作詞は朝比奈京子、作曲はもちろん、すぎもとまさと。その歌声は、自然体で聴く者にストレートに届く。

「これまでは映画の主題歌がほとんど。映画の歌って全てを終えてから録るんです。一番最後の仕事。長い時間演じた後で歌に入るから、役を引き摺って歌っていました。梶が歌っているというより役が歌っているんです。今回は、本当に曲だけがあって。言葉に命を吹き込むのが仕事ですから、表現の仕方を考えて……ところがすぎもと先生の曲は、私が表現したいそのままに曲に入れるんです。それがすぎもと先生の曲のすごいところ。サビで聴かせたり、歌い上げるわけでもないのに、個性が出る。ファンの方に『女をやめたい』で映画を作ってといわれました。映像が浮かんでくるんだそうです。朝比奈さんの詩と、すぎもと先生の曲の素晴らしさですね。本当にすぎもと先生にお願いしてよかったと思いました」

   今、歌が「壊れている」と感じる人は少なくないだろう。だが、梶芽衣子の歌は「壊れて」いない。

「25年ぶりに出すのに『女をやめたい』って、と最初思ったの。どうしたらいいのって。もちろん反語ですよ。長く女でありたいという歌なんだけれど、こんなに女っぽい歌をこれまでに歌った記憶がない。前の私なら、絶対に照れていたと思うんです。最初のフレーズが♪抱いてよここで~、だもの。でもそういう事を照れずに表現できるんです、今なら。だから、機会があったら前のすぎもと先生にいただいた曲もやり直しさせていただきたいと思います」

   梶芽衣子は今、生涯初めて全国のCDショップ巡りをしている。それを「楽しい」と言う。

「いま70店舗を越えましたが、直接お店の方にお話も伺えるし、偶然にファンの方ともお話ができたりしますし。そうしたことが私の栄養になってきているんです。考えてみれば生活に必要のないCDです。それを買っていただくのはどういうことか、実際歩いてみると実感できますし、感謝の気持ちも湧いてきます」

   もう一つ、25年ぶりの歌には目的があるという。

「ライブをやりたいんです。映像の世界でずっと来てますが、お客様の前で生の自分を晒してなにかを表現することをしたいと思い始めているんです。これは是非実現したいなと思っています。CDを出した目的の一つになっているんです」

   アウトロ:「さそり」の梶芽衣子は、ここにはいない。だがあの頃より遥かに前向きで、遥かにしなやかで美しい梶芽衣子が、ここにいる。

加藤 普



◆加藤 普(かとう・あきら)プロフィール
1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70~80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。

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