2024年 4月 26日 (金)

下地勇がアルバムで伝える 宮古島の「アララガマ精神」

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下地 勇
『民衆の躍動』
TECI-1260
2500円
09年9月2日発売
インペリアルレコード/テイチクエンタテインメント




   いつもながら、凄いアルバム。下地勇の歌を聴いたのは、2年前のアルバム『3%』が初めてだったが、そのときの衝撃は今も忘れない。宮古島固有の方言(ミャークフツと言うそうだ)で歌う歌は、言葉が分らないにもかかわらず、胸を切り裂いた。このアルバムでも下地のポテンシャルは上がる一方。Beginの島袋とのユニット、シモブクレコードでの明るい下地も良いが、魂の根源を揺り動かされるような、下地勇一人で取り組む歌はさらに良い。

   インディーズでCDデビューしすでに6年、メジャーデビュー後4年経ち、いい加減40歳路に手が届こうというのに、下地の歌うという立ち居地はまったくぶれない。宮古島という下地自身のアイデンティティの拠り所が、彼をそうさせているようにも思う。同時に、沖縄という幾らかは広義の地域性も、下地がそうあり続けていることを助けているように思う。沖縄のミュージシャンたちとの、おそらくはゆったりと、しかし内面では緊密な関係性も、下地の世界を大きく広げているようにも思う。前述したシモブクレコードでのBegin・島袋優とのジョイントもそうだが、沖縄を中心としたライブでは、沖縄在のミュージシャンが入れ替わり立ち代り参加しているようだ。そして、以前にこのコラムでも独占インタビューとして取り上げたが、砂川恵理歌の歌う「一粒の種」の作曲者でもある。同曲は、自身のライブなどでも披露している。沖縄に行けば地元のオリオン・ビールのキャラクターにもなっている。

   下地勇のこの作品が醸し出す宮古島の「アララガマ精神(負けじ魂というとちょっと浅薄かもしれない。なにくそというか、苦しい時こそ発揮する反骨精神のような意味合いも感じる言葉だ)」の詰まったアルバムを是非聴いて欲しい。

   どこか明るく、真剣で、ストレートに胸に押し入ってくる。

   独特の文化圏を形成する沖縄、とりわけ音楽文化の成熟度、完成度は、内地の比ではない。今では、ハワアン、レゲエと並ぶ、世界の「島の音楽」の代表格といって良い。下地勇はその中にあって、さらにクオリティの高い世界を生み出している。

加藤 晋

【民衆の躍動 収録曲】
1. 民衆の躍動
2. ピサラ・デ・サンバ
3. 運命の釘
4. 偉大なるアメリカ石鹸
5. 未開の地へ
6. 反骨の島 ~アララガマ~
7. ラスト ワルツ
8. 朝の散歩路
9. ミ・ウ・トゥ
10. 帰る場所
11. アキシャル ~夜明け~
12. We Decide ~決断のとき~



◆加藤 普(かとう・あきら)プロフィール
1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70~80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。

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