あのスーザン・ボイルもビックリ 100kg巨漢セールスマンの美声

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ニール・E・ボイド
『マイ・アメリカン・ドリーム』
UCCL-1149
2500円
11月25日発売
ユニバーサルクラシックス


   最近、オーディション番組に集まっている熱い視線の先には、ちょっとこれまでにない傾向がある。といっても日本ではなく欧米の話。

   オーディションの多くは明日のスターを探し出す事を大きな目的としているのだけれど、これまでにはなかったこと、それはクラシック系のアーティスト、スターの登場だ。これまで、オペラなどのクラシック系の声楽は、きちんとした勉強、訓練を受ける事が大前提であり、そのために音楽学校、音楽大学も存在する。学ぶ事で、その先に活躍する場も広がっている。きちんとしたシステムが出来上がっている世界で、そこからしかスターは生まれようもなかった。

   それが07年のポール・ポッツの登場で、正規の声楽訓練の場である音楽大楽や音楽学校以外の、どこにでも卓越した才能をもったタレントがいるのだと、誰もが知る事になった。

   そしてポール・ポッツと同じオーディション番組「ブリテンズ・ゴット・タレント(BGT)」で、SoBoことスーザン・ボイルが、再びスターへの切符を手に入れた。一見どこにでもいる目立たないただの街のおばさんでしかない彼女の歌声は、天使の歌声だったのだ。彼女の歌声のネットでの再生回数は2億回を越えている。

   そして英国から米国へ。BGTのアメリカ版「アメリカズ・ゴット・タレント」から、黒人と白人のハーフで、100kgをゆうに超える巨漢ニール・E・ボイドが登場する。前述の2人に負けず劣らずの才能をもつ「保険のセールスマン」だった。その素晴らしい歌声は、全米の何千万人もの心を一気に掴み、08年のシーズン3で視聴者による人気投票の末、みごと優勝!!

   この11月にアメリカのデッカから『マイ・アメリカン・ドリーム』でデビューを果たした。ソロ・アーティストとして舞台に立つのも遠くないだろう。ミュージカルにも進出するかもしれない……そんな勝手な期待を裏切る事のない内容。

   余談だが、今名前を挙げた3人にはある共通項がある。それは3人とも外見上の理由で「いじめられっ子」だったという事実。だが、マイナス要因と思われた外見も、いまでは大きな武器になっている。そういう意味では3人の存在が、多くの人々の希望となったのは確か。

   そしてもう一つ。音楽そのものが、ロックも含めたポピュラー・ミュージックの革新性の希求から、クラシックなどの再現性を重視した完成された音楽へと、回帰し始めているようにも思える。なにか、これまでとは異なった音楽へのアプローチが始まっているような気がする。

【マイ・アメリカン・ドリーム  収録曲】
01. ゴッド・ブレス・ザ・USA
02. 誰も寝てはならぬ
03. MAMA
04. サムホエア~ミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」より
05. イル・グラディアトーレ~映画「グラディエーター」より
06. 彼を家に~ミュージカル「レ・ミゼラブル」より 
07. ナッシング・セイクリッド
08. アンセム~ミュージカル「チェス」より
09. ソニー・ボーイ
10. アヴェ・マリア(シューベルト)



◆加藤 普(かとう・あきら)プロフィール
1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70~80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。

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