盲目の天才ピアニスト・辻井伸行が描く、「特別な」ショパン

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辻井伸行
『マイ・フェイヴァリット・ショパン』
AVCL-25489
3000円
3月24日発売
エイベックス・マーケティング


   久しぶりにクラシックの話を。

   アメリカで開催されるクラシック音楽のコンクールの一つに「ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール」がある。4年に一度開催されるのだが、1958年に「第1回チャイコフスキー国際コンクール」で優勝したヴァン・クライバーンを讃えて1962年に創設されたコンクール。第1回目当時は優勝賞金額の高さ(当時1万ドル!)が話題になったりもしたが、いまでは「エリザベート」、「チャイコフスキー」、「ショパン」、「リーズ」に並ぶほどのピアノコンクールとなっている。

   クライバーンが旧ソ連のモスクワで開催された「チャイコフスキー」で優勝した58年は、旧ソ連とアメリカは冷戦の最中で、「敵地に乗り込んでの優勝」といったニュアンスが一層クライバーンの優勝を引き立たせたようだ。

チャン・ハオチェンと同着で優勝

   それはそれとして、第3回コンクールで第2位に野島稔、第6位に藤沼美智子が同時入賞して以来、実に40年以上もの間「クライバーン」での日本人入賞はなかったのだが、09年の第13回コンクールで視覚障害を持つピアニスト・辻井伸行が、中国のチャン・ハオチェンと同着で優勝を飾った。

   辻井は現在21歳だが、10歳の頃からコンサート・デビューするほどの天才ピアニスト。目が不自由なのだから、譜面とは無縁のピアノのレッスンを行っているわけで、彼の耳の繊細さには脱帽するほかない。

   その辻井が、優勝後初のアルバムをリリースした。今年生誕200年となるショパンへのアプローチ。ショパンといえば、05年の「第15回ショパン国際ピアノコンクール」で「批評家賞」を受賞しているし、09年秋のツアーでオール・ショパン・プログラムに取り組み弾きこんでもいる。録音も08年に「ラフマニノフ」を録った経験のあるベルリンのテルデック・スタジオと、不安要素はなにもない状態での、完璧な演奏。プロデューサーはフリーデマン・エンゲルブレヒト。バレンボイムやアーノンクールなどの録音も手がけた名人。

   繊細なピアニッシモから、曲全体のデリケートな構成と辻井ワールド全開の1枚になっている。

   それにしても、辻井のショパンを聴いていると、彼はなにか特別なショパン像を見ているのではないかと思わずにはいられない。今年はショパンイヤーということもあり、多くの演奏家、アーティストがショパンにチャレンジしている。是非聴き比べてください。<モノウォッチ

加藤 晋


   【マイ・フェイヴァリット・ショパン  収録曲】
1. アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ
変ホ長調 作品22(アンダンテ・スピアナート)
2. アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ
変ホ長調 作品22(華麗なる大ポロネーズ)
3. バラード第1番 ト短調 作品23
4. 4つのマズルカ 作品24(第14番 ト短調 作品24の1)
5. 4つのマズルカ 作品24(第15番 ハ長調 作品24の2)
6. 4つのマズルカ 作品24(第16番 変イ長調作品24の3)
7. 4つのマズルカ 作品24(第17番 変ロ短調作品24の4)
8. 2つのノクターン 作品27(第7番 嬰ハ短調 作品27の1)
9. 2つのノクターン 作品27(第8番 変ニ長調 作品27の2)v 10. 幻想曲 ヘ短調 作品49



◆加藤 普(かとう・あきら)プロフィール
1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70~80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。

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