うめ吉ALLABOUTUMEKICHIOMCA-11323000円7月21日発売オーマガトキこのアルバムをもし聴かれたなら、「いよいよ、良い良い感じでげすな!」と、初代の櫻川ぴん助師匠は言ったことだろう。存命ならの話だが……。かれこれ30年前、初代のぴん助師匠が倒れられる前に、運良く取材ができたことを思い出した。当時はまだお元気で、四谷の自宅にうかがい「最後の幇間」と言われた、味わいのある、枯れそうで枯れないお座敷芸のいくつかを見せていただいた。いまは娘さんが2代目ぴん助として活動されているが、おそらく芸風も醸し出す空気も、まったく別のものだろう。日本の芸能の頂点には能だの狂言だのが君臨し、ちょいとあざとい歌舞伎や話芸の落語、そうした芸能を支える囃子方(はやしかた)、そこからそれぞれに派生する俗曲など多岐に渡るが、いま時は、伝統の灯を消すまいと、あるいは世襲のようにそれぞれを継承するようなで、言ってみれば一種の閉鎖社会が出来上がっている。中には、歌舞伎の十八代目勘三郎や十二代目團十郎などの革命児もいるが、全体としてみると、やはり閉鎖社会と思わざるを得ない。芸能社会の片隅で独り気を吐く俗曲師そんな日本的芸能社会の片隅で、なんだか独り気を吐いているように見えるのが、うめ吉姐さんだ。落語芸術協会所属の俗曲師だが、活動は多岐に渡り、広く深い。CDひとつとっても、小唄、長唄、都々逸はもとより明治・大正の流行り歌に、昭和歌謡、童謡に民謡……と、おそらくいまではうめ吉姐さんしか歌わない歌を、片っ端から聴かせてくれるのだ。そのうめ吉姐さんが、2000年から「檜山うめ吉」として活動をはじめて10年。その10周年を祝って出されるのが、この『ALLABOUTUMEKICHI』。なにしろ全21曲、未発表のオリジナルから未発表の「お富さん」、フランス語、ドイツ語の曲、民謡から昭和歌謡まで、とにかく多種多彩な曲が並ぶ。余談だが、「お富さん」は僕がはじめて全部憶えた記念すべき1曲でもある。だから思い入れもある、正直いま聴けるのが嬉しく、楽しい。この楽しさは、実に30年前、あのぴん助師匠を取材した時に感じた「いま生きている」日本の芸能の楽しさ、奥深さに通じるものがある。とにかく無条件に楽しい。加藤 普【ALLABOUTUMEKICHI 収録曲】1.雷ロック(オリジナル新曲)2.銀座ロックン3.五月雨恋唄(オリジナル新曲)4.SUTETEKO(クラブバージョン)5.YAKKO・SAN(クラブバージョン)6.ホームランブギ7.ヘイへイブギ8.ニャンニャン踊り9.三味線ブギウギ10.鹿児島小原節11.隅田ばやし12.祇園小唄13.買い物ブギ14.お富さん15.東京音頭16.酋長の娘17.セ・シ・ボン(フランス語)18.ウィーン我が夢の街(ドイツ語)19.さよならを教えて(フランス語)20.都々逸21.山中節
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