2024年 4月 28日 (日)

発想柔らかく天才的なひらめき グラミー賞上原ひろみの「凄さ」

スタンリー・クラーク・バンドfeat.上原ひろみ
スタンリー・クラーク・バンド
UCCT-1221
2500円
2010年6月2日発売
ユニバーサルクラシック/ヘッズアップ


    海外で活躍中の日本を代表するジャズ・ピアニスト=上原ひろみ。もうご存知だろうが、先日発表があった第53回「グラミー賞」で最優秀コンテンポラリー・ジャズ・アルバム賞を受賞した。

   受賞の対象となったのは、10年6月にリリースされた、スタンリー・クラーク・バンドfeat.上原ひろみによる『スタンリー・クラーク・バンド』。

スタンリー・クラークが高く評価

   スタンリー・クラークといえば、1970年代のフュージョン全盛期を代表するトップ・ベーシスト。ごりごりのジャズ・ベースというよりは、よりソフィスティケートされた音を聴かせる。そのスタンリーは、上原ひろみの才能を高く評価し、09年の『ジャズ・イン・ザ・ガーデン』以来、レコーディングやツアーをともにしている。

   正直なところ、このアルバムがジャズ部門でグラミーを受賞したのは、まったく上原の参加した結果だと思える。もちろん、スタンリー・クラークのリーダーアルバムだから、スタンリーが前面に出ているのは当然だが、全13曲中6曲で演奏している上原の書き下ろし曲「ラビリンス」、日本盤のみのボーナス・トラックとはいえ彼女のソロ・アルバム『プレイス・トゥ・ビー』からのセルフ・カヴァー「サムウェア」などが収録されていて、上原色も相当に前に出ている。そこがジャズなのだ。

   グラミー受賞ということで、上原ひろみはもう一段高みに上り詰めた感があるが、ジャズ・ピアニストとしての上原の実力は、とうの昔に世界のトップまで上り詰めていた。それは、天才的なひらめきと、まったくゆるぎないテクニカルな裏づけがあってのもので、ことにライヴでのパフォーマンスには圧倒される。

落語家からジャズやポップスまで多彩なコラボ

   筆者もこれまでに、何度かインタビューしたが、彼女の音楽に対する間口の広さ、というよりはほとんど制限のない森羅万象に対する尽きない興味には驚かされ、また納得させられる。

   パンクからクラシックに至るまでは音楽であるから当然として、カール・ルイスやマイケル・ジョーダンに影響を受けたと言い、タップダンサー・熊谷和徳や落語家・笑福亭鶴瓶とのコラボ・ライヴもやる。チック・コリア、矢野顕子、綾香、東京スカパラダイス・オーケストラといったアーティストとは当然のようにコラボする。

   こうした柔軟性は、他のジャズ・アーティストにはない。そこに上原ひろみの天性を見るのだ。

   今回のグラミーで、上原含め4人の日本人がグラミーを受賞した。すごいことだ。が、その中でやはり上原ひろみの受賞が、筆者にとっては最も喜ばしい。

   ついでに言うと(ついでといったら怒られそうだが)、まるでグラミー受賞がわかっていたかのように、3月には上原ひろみの音源がドドッと登場する。スタンリーとの2作は言わずもがな。

   まずは、待望のニューアルバム『ヴォイス』が3月16日に日本先行リリース。アンソニー・ジャクソン、サイモン・フィリップスを迎えたトリオ作品。全9曲。同時に、ソロピアノDVD『ライブ・アット・ブルーノート・ニューヨーク』も再発! これは、昨年末のツアー会場とオフィシャルサイト限定で発売されていたもの。10年8月のブルーノート・ニューヨーク公演から全11曲+ツアードキュメント映像を収録している。

   上原ひろみ祭りの始まりだ!!

加藤 普

【スタンリー・クラーク・バンド 収録曲】

1. ソルジャー
2. フラニ
3. ヒアズ・ホワイ・ティアーズ・ドライ
4. アイ・ワナ・プレイ・フォー・ユー・トゥー
5. ベース・フォーク・ソング No.10
6. ノー・ミステリー
7. ハウ・イズ・ザ・ウェザー・アップ・ゼア?
8. ラリー・ハズ・トラベルド・11マイルス・アンド・ウェイテッド・ア・ライフタイム・フォー・ザ・リターン・オブ・ヴィシュヌズ・レポート
9. ラビリンス
10. ソニー・ロリンズ
11. ベース・フォーク・ソング No.6 <モー・アナム・カラ>
12. サムウェア (日本盤のみのボーナス・トラック)

◆加藤 普(かとう・あきら)プロフィール
1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70~80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。

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