一青妙&一青窈、亡父を通して知った日台の深い「絆」

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   2011年3月11日に起きた東日本大震災の後、未曾有(みぞう)の被害に世界から物心両面の支援が届けられた。そのなかでも際立っていたのが、台湾で集められた200億円を超える義援金だ。著名人有志によるチャリティー番組が台湾のテレビ局で大々的におこなわれた映像は記憶に新しい。

「台湾人にとって日本人の不幸は他人事ではない」

『私の箱子(シャンズ)』
『私の箱子(シャンズ)』

   もともと、台湾は親日家が多いことで知られるが、その歴史的背景を知る日本人はそう多くはいないに違いない。教科書では教えてくれない台湾と日本の関係を、亡き父の人生を通して明らかにするのが、講談社から2012年1月13日に発売された新刊本『私の箱子(シャンズ)』だ。

   著者は、女優で歯科医の一青妙(ひとと・たえ)で、妹は「もらい泣き」や「ハナミズキ」で知られる歌手の一青窈(ひとと・よう)。日本占領下の台湾で「日本人」として生まれた姉妹の父親は、来日して学習院で学び、自らを「天皇の赤子」であると信じて疑わなかった。しかし、1945年8月15日、日光で学友たちと玉音放送を聞き、「母国」が戦勝国と敗戦国にわかれたことを知って、眉毛がすべて抜け落ちるほどの精神的ショックを受ける。敗戦から2年後、在日台湾人の引き揚げ措置で日本を後にした父だったが、台湾で待ち受けていたのは、二・二八事件をきっかけに繰り広げられた外省人による本省人の迫害という惨禍だった。

   父親は密航という手段で日本に舞い戻り、失意の日々を過ごす。2つに引き裂かれたアイデンティティーに苦しみながらも、日本人の友人たちから「日本人よりも日本人らしい」と愛されたが、50代の若さで幼い姉妹を残し、ガンに倒れた。執筆にあたって、日台の歴史と父親の人生を振り返った一青妙は、『私の箱子』の中でこう記している。「台湾人にとって日本人の不幸は『他人事』だと思えないほど、両者の関係は近いのである」。日本が世界の祈りで包まれたあの日から一年、その祈りのなかにこめられた日本と台湾の深い「絆」の歴史に思いを馳せる一冊である。

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