【書評ウォッチ】スポーツ感覚理系イベント 出場高校生と大人たちが感動的

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【2012年5月13日(日)の各紙から】若者向けに北米で盛んなサイエンスフェアにかかわる人たちを描いた『理系の子』(ジュディ・ダットン著、横山啓明訳、文藝春秋)を、朝日と毎日が同時にとり上げた。中高生が科学研究の成果を競い合うイベントで、スポーツ大会感覚の賞金獲得と才能発掘の場。大学や博士課程を上回る発明も多いが、盛りたてる大人たちの姿も感動的。ちょっと異色の一冊だ。

度肝を抜かれる水準の高さ

『理系の子』
『理系の子』

   地域大会から全米・国際大会まであり、最高峰はインテル国際学生科学フェア。毎年50を超す国々から高校生1500人以上が集まり、理科の自由研究を発表する。本はその青春模様を浮き彫りにしたノンフィクションだ。

   「まず度肝を抜かれるのは、出品される研究の水準の高さ」と、朝日の評者・川端裕人氏。小型の核融合炉をつくった生徒、ナノテクノロジーの研究で賞と特許をとった18歳、自閉症のいとこのために教育プログラムを開発した高校生……化学会社デュポンの企業城下町で飲料水に有害化学物質が含まれることを示した生徒もいた。

   「そこに至るまでの試行錯誤、挫折を克服するプロセス等々がいきいきと描かれており、読み物として楽しい」と川端氏は解説。毎日でも精神科医の小西聖子氏が「才能とまっすぐな努力が伝わってくる」と評している。

受け入れる大人と社会の鷹揚さ

   こういうと、社会経済的に恵まれた天才秀才の物語と思われそうだが、そうではない。障害がある、変わり者、矯正施設にいる、そうした子も出場している。ネイティブアメリカンや高校へいかずに家で教育を受ける子も。小西氏は「見守る人たちがいること、社会に受け入れる鷹揚さがあることにも胸打たれる」という。

   たしかに才能は必要だが、最初から子どもが輝いているわけではない。突飛な発想を後押しし、励まし、指導し、称賛する大人の存在は大きい。小西氏の言うとおり「日本人にはなかなかできない技」かも知れない。

   ほかでは、瀬戸内寂聴さんとドナルド・キーンさん、ともに今年90歳の対談『日本を、信じる』(中央公論新社)を読売が紹介した。源氏物語の魅力を語りあい、深い死生観を示す。

   「熟読しながら、心から生きたいと思う対談である」と、評者の橋本五郎氏が語っている。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

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