原発めぐる「暴走」の正体暴く 単身挑んだ「東京電力」研究の決定版

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   東京電力をめぐる断片的な報道は、大量に流されている。そこに決定版とも言える企業研究として、『「東京電力」研究 排除の系譜』が講談社から刊行された。著者はジャーナリストの斎藤貴男氏。

「吐き気が止まらなくなった」

『「東京電力」研究 排除の系譜』
『「東京電力」研究 排除の系譜』

   脱原発か原発再稼働か。夏を迎えて電力をめぐる議論が過熱しているが、斎藤氏は「何よりもまず必要なのは、『脱被曝』ではないか」と訴える。

   なぜ斎藤氏は「脱原発」を叫ばないのか。監視社会や格差社会、最近では消費税増税に厳しい批判を浴びせている斎藤氏は、それだからこそ、陰湿な嫌がらせや圧力にさらされ続けてきた。権力におもねる書き手たちは、リスクを負わずに活躍の場を広げていく。一方で組織に属さず、単身で取材を重ねていく斎藤氏は、世間から疎まれていく。「反権力」イコール「反日」であり、少数意見は排除せよ、という潮流が日本を覆う。匿名の誹謗中傷・罵詈雑言がネット上にあふれ、「吐き気が止まらなくなった時期もある」と斎藤氏は告白する。

   そして今、「原発」をめぐる論議がどちらに傾くにしても、反対勢力を排除しようとする勢力が暴走したら、今度こそ取り返しのつかない事態を招くのではないか。斎藤氏はこの「暴走」の恐ろしさを、身をもって知っている。

   そこで自分のできることは、「過去の暴走の正体をできるだけ、それも原発の担い手に焦点を合わせて詳らかにしておく」ことではないかという。

   こうして、たった1人で巨大企業の、そして日本の病巣を描き切る取材がはじまった。

かつて原発を選択した「私たち」のできること

   保守論壇が作られ、労働運動が圧殺され、カリスマ経営者が称揚される。

   原発の「安全神話」を守るため、異を唱える意見をすべて潰し、そのために安全が度外視されてしまったという逆説。そして招かれた福島第一原発事故という破綻は、日本の戦後を通じて着々と準備されていた――。

   本書は膨大な取材を通じて、巨大権力が人間の尊厳を嘲笑してきた歴史を暴き、一方でそれに抗して立ち上がった人々の姿を描いていく。

   かつて「排除」と「支配」を選択してきた「私たち」自身が、今度こそ真っ当な選択をするために知るべきこととは何か。400ページにそれらが凝縮された、まさに企業研究の「決定版」と言える書である。

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