2024年 4月 29日 (月)

【書評ウォッチ】電子書籍の傾向と対策 小学館・講談社の新企画を紹介

【2012年6月17日(日)の各紙から】呼び名はすっかり定着したが、売れ行きはまだパッとしない。それでも、ITの時代にやがて売れ出すのではという期待は膨らみ続けて……電子書籍のこんな、どこかむず痒い状況を2紙が記事にとり上げた。講談社と小学館の新企画や旧作・大作の電子化も話題にする。広がりそうで広がりきれない現状打開の意欲が小さな記事から伝わってくる。

ネット上で初の共同コミックフェア

電子書籍普及に向け、出版社側も取り組み(画像は、アマゾン・キンドル)
電子書籍普及に向け、出版社側も取り組み(画像は、アマゾン・キンドル)

   映像化された原作本やベストセラーの上位本といった注目作を「指定買い」する人が、電子書籍では多い。おかげで、売れ筋が紙書籍の場合よりも偏りがちになる。この傾向を少しでも変えようという取り組みを、日経が「活字の海で」のコーナーで。

   小学館と講談社は28日までインターネット上で共同のコミックフェアを展開中。「闘う男特集」「青春恋愛特集」などのテーマごとに男性向け、女性向けの約100冊を紹介する。『島耕作』シリーズや『岳 みんなの山』『はいからさんが通る』など2社の代表作や人気の旧作、さらに中小規模のヒット作をそろえている。

   出版社が力を合わせる電子書籍フェアは初の試みという。ネットで漫画を配信する25書店も協力した。「ほら、面白い作品がありますよ」と読者に気づかせ、選択の幅を広げてもらう狙いらしい。

昔のベストセラーも、値段は安く、地方でも

   年代別に当時ベストセラーだった小説などを掲げるのは電子書店「BookLive!」だ。「あのころのベスト10」と銘打って、第一回は1973年。小松左京の『日本沈没』や遠藤周作の『ぐうたら人間学』などを載せた。これまで5回実施し、少なくとも年内は継続するという。旧作や絶版本も手軽にさがせるのが電子書籍の良さ。それには数をそろえて読者に提供する必要がある。たしかに、その方向に進んでいる。

   講談社は紙の本で出版した『天皇の歴史』シリーズ全10巻を電子化した。コミック主流の中で「古代から現代まで天皇を通じて日本を読み解く硬派の歴史本は、異色の存在に映る」と朝日に。紙で2730円の値段は、電子版で1995円まで下げられた。発行部数も紙は各巻1万部前後、電子版なら限りはない。小さな書店しかない地方都市でもネット経由で買える。講談社では絶版本についてツイッターなどで要望を募り、復刊する企画も。

   電子書籍の良い点はいっぱいある。とはいっても、紙で100万部突破の『スティーブ・ジョブズI・II』も電子版ではまだ約4万部。これからだ。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

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