「3.11」残された人々は今 「電話したら出そうな気がして…」

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   「娘の携帯に電話したら出そうな気がする。まだ、夢の中にいるんです」

   東日本大震災から1年半。あのときどんな体験をし、いま何を感じているのか。被災地の人々のギリギリの思いを丹念につづった本が出版された。「負けないで 3・11その時そして」(ツーワンライフ出版)だ。

   諦めようとしても諦めきれない、しかし再起しなければならない。残された家族や友人たちの痛切な言葉が胸に迫ってくる。

「死んじゃった。ごめん。許して」

「負けないで 3・11その時そして」(ツーワンライフ出版)
「負けないで 3・11その時そして」(ツーワンライフ出版)

   「(父親が)巧君と再会したのは、地震の約1週間後、遺体安置所だった……巧君は全身が砂にまみれ、髪は整髪剤を使ったように砂で固まっていた」

   「夜道、家族の前では泣けない男たちが、暗闇で何人も泣いているのを見た」

   「知人から、3回火葬された人がいると聞いた。遺体が3度にわたって見つかったからだ。こんな話を聞くと、みつからなくてもいいと……」

   朝日新聞岩手版に震災1か月後から毎日連載されている「3.11その時そして」をまとめたものだ。全体は「家族」「逃げる」「避難所」「支える」など14章に分かれ、最後に取材した記者たちの動きなども伝えている。登場するのは約100人。「ヒューマン・ストーリー」として、それぞれの物語にかなりの行数が割かれているので読み応えがある。

   「(許婚を)探し続けた。遺体安置所にいないと、安心して避難所を出る。その繰り返しだった。……『死んだ人は夢に出る』という話を聞いた。出てほしくなかったので寝られなかったが、7日目にコトンと寝入った……(許婚は)『死んじゃった。ごめん。許して』。笑っていた」

   「九分九厘あきらめているが、心のどこかで可能性を求めている。女房が『お父さん。何で写真を飾っているの。私、生きているのよ』と言って出てきそうな気がする」

    あとがきで盛岡総局長は、犠牲者のひとりひとりに大切な人生があり、家族や友人があり、突然閉ざされた未来があった、この震災を犠牲者何万人という「丸めた数字」で語りたくなかったと記している。そして、ひとりでも多くの犠牲者や被害者、支援者のことを歴史に刻み伝えるために連載を始め、続けていると書いている。

   口絵写真のトップには、津波で母らをなくし、海に向かってトランペットでZARDの「負けないで」を奏でようとする女子高生の写真が掲載されている。

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