2020年 9月 25日 (金)

【書評ウォッチ】領土と国境の「あ・うんの呼吸」 「冷静」だけでは解決困難かも

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   竹島や尖閣諸島をめぐって、この夏は揺れた。関連本のコーナーを特設する書店が多く、元外交官らの発言も目立ち始めた。『日本の領土問題』(保阪正康・東郷和彦著、角川oneテーマ21)と『日本の国境問題』(孫崎享著、ちくま新書)を、国境学の岩下明裕さんが朝日で違和感もふくめて紹介している。「事態を客観視しようと努める」指摘が数々あるというのだが、沸騰する議論の一つとして、本の内容自体を客観的に受けとめながら考える読み方が必要だろう。【2012年8月26日(日)の各紙からI】

「国論のバランスをとろうとする国際感覚」とは

『日本の領土問題』(保阪正康・東郷和彦著、角川oneテーマ21)/『日本の国境問題』(孫崎享著、ちくま新書)
『日本の領土問題』(保阪正康・東郷和彦著、角川oneテーマ21)/『日本の国境問題』(孫崎享著、ちくま新書)

   外交官は自負心と責任感が強いせいか、評者が言うとおり「自身の仕事を歴史のなかで過大評価する傾向」を持つ。同時に、ともするとナショナリズムに傾きがちな国論のバランスをとろうとする国際的感覚をも備えている。

   たとえば、北方領土に関して、「四島一括」を絶対視する言説に東郷さんは懐疑的。孫崎さんは「いかに紛争を起こさないかが日中外交の重要な課題」として、今回の香港人尖閣上陸を野田政権が「強制送還」で迅速におさめたことに理解を示す。そこから、評者は「当事国間のあ・うんの呼吸が乱れたときこれは一気に政治問題化する」ととらえている。

   ただ、著者ら知識人・専門家が理を説きながら強調する冷静な対処法が、現実の事態に最も的確な方策とは必ずしも限らない。まして、東郷・保阪両著者の対談が「竹島の主権放棄」を賛成しないと予防線を張りつつも示唆したと受けとるなら、「違和感もある」と評者が記すのは当然だろう。

   冷静な国際感覚という言葉はいかにも知的で一見正しそうに響く。それが求められる面は確かにある。一方で怒りの表明が必要な場合や、具体的な反撃がなされるべきときもある。ことに「竹島」は外交官だけに任せてすむ問題では、すでにない。どちらの本も貴重な提言と参考文献の一つと受けとめてこそ、「身銭を切るに値する」(評者)というものだ。

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