【アカシアオルケスタ・インタビュー】
ピアノロックが叩きつけた挑戦状 3rdアルバムにみる「変幻自在」の境地

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『ヒョウリイッタイ』
『ヒョウリイッタイ』

アカシアオルケスタ
『ヒョウリイッタイ』
OMCA-1165
2500円
2013年3月20日発売
オーマガトキ/日本コロムビア株式会社


   2010年にメジャーデビュー以来、アルバムリリースのたびにインタビューしてきた、アカシアオルケスタ。

   インディーズ時代も含めればすでにアルバム『テアタリシダイ』(2007年10月)、『カゴノトリ』(08年10月)、メジャー1st『タイクツシノギ』(10年12月)、2nd『メカシドキ』(11年11月)と、順調にバンドキャリアを積み重ね、アカシアオルケスタにしかできない音作りを聴かせてくれファンも増殖中だ。

「尖った感じが蘇った」

   そして3月20日リリースの3rdアルバム『ヒョウリイッタイ』(OMCA-1165 2500円)は、彼らのバンドとしてのアイデンティティであるピアノロックの面白さ、力強さ、可能性の大きさを詰め込んだ1枚に。

   ピアノロックという演奏スタイルは、ありそうで意外に少ない。ロックといえばギター・サウンドと相場は決まっている。だがアカシアオルケスタは、敢えてギターを排除する。そのピアノを担当する西村は、こんなことを言う。

   西村「ピアノバンドをやってきて、なにか普通な感じになっていたけど、今回のアルバムでは自分を今一度掘り起こした感がある。例えばギター・サウンドに対してもっと敵意むき出しで、血気盛んだった頃の尖った感じが蘇った」

今回のアルバムの「肝」とは

メンバーたちは、「原点回帰」を強調した。Photo by HIDEKI Namai
メンバーたちは、「原点回帰」を強調した。Photo by HIDEKI Namai

   そう、敢えてギターを外し、ピアノで音を構成することは、実は「ロックではない」と言われかねないほどの冒険なのだ。だから、敢えてギターを外すロックバンドは、ほとんどいない。だが、そこが、今回のアルバムの「肝」だとドラムの北川は言う。

   北川「今回は原点回帰というか、もう一度ピアノロックという僕らの原点に立ち帰ってアルバム作りをしようと取り組んだ音。前作を作り終わって一息ついている時に、藤原(岬 Vo.)がもう一度サウンド面を見つめ直そう、ピアノロックに立ち帰ろう、原点回帰するために個々の演奏能力、バンドとしての表現力をもっと高めたいと言ってきた。だから、このアルバムを出すまでに多少時間がかかった。でも、非常にいい機会だった。ここが俺らの肝なんや、ど真ん中やと見つめ直せたし、挑戦することもできたと思う」

   アカシアオルケスタの曲を1曲でも聴いたことがある人なら、メンバー個々の演奏の力量をよくご存知と思うが、とにかく一級品。

   北川のドラムの温かなグルーブ感は、破壊的な印象と表裏一体だ。西村の一筋縄ではないピアノの浮遊感、佐野のベースの概念をぶち壊すほどのプレイは、まさに「変幻自在」で、聴く者を飽きさせない。まるで遊び倒しているようだが、「アカシアオルケスタの音」を壊すことはない。一方でオーソドックスな調べは美しい。

   そして特筆すべきは「楽器の一つ」と、藤原岬自身が言い切るヴォーカルだ。

   西村「うまい人はいっぱいいる、音程がいいとか声量があるとか。でもそういうことじゃない。曲に色や表情を与える歌い方、表現は、藤原岬ならでは」

   ピアノの西村が言うように、藤原岬のヴォーカルは、さらに「変幻自在」。なにしろ、曲ごとに別人が歌っているかと思うほどだが、アカシアオルケスタ・サウンドは揺るぎなく、歌の説得力も消えない。一つ一つの曲のヴォーカルが、音の中で違和感なくしっくりと接着剤のようになって曲を作り上げている。

   ベースの佐野は、こんなことを言った。

   佐野「僕らは、唯一。音楽シーンにピアノバンドで、こんなことできるんだぞという挑戦状を叩きつけて、気付けの一発という感じの作品を残せたという実感がある。自分たちの軌跡を全て封じ込めた、最高傑作と思えるものができた」

「全ては紙一重」

   この自信は捨てがたい。これこそがバンドが生き続けるモチベーションの原点ではないか。

   いつもはバンドのメッセンジャーでもある藤原岬に話を聞くのだが、今回は敢えて封印。なにか、アルバムを聴くことで、藤原岬が言いたいことの8割方は理解できるのではないかと思ったから。

   ひとつだけ、アルバムタイトルの『ヒョウリイッタイ』の意味を聞くと、藤原岬はこんな言葉で説明してくれた。

   岬「全ては紙一重。表も裏もどちらかだけでは成立しないもの。光と影があってひとつのものが出来上がるという、あり方」

   ……。

   3曲目に「花魁道中」という曲がある。

   三味線の演奏が加わって、和のイメージがあるのだが、「やっちゃった 嗚呼 やっちゃいました」で始まり「ずらかっちゃって」で終わる。これがすこぶるカッコイイ。

   藤原岬の言葉のセンスも光るのだが、この「花魁」を藤原に比すれば、男どもはさしずめ男伊達の「町奴」。

   どこか華やいでどこか危うげで、なのにどこかきっぱりと自分がある。

   とにもかくにも、もうそろそろこのバンドはフロントライン(単に売れるという意味ではなく)に立つと、心底思う。

加藤 普

【ヒョウリイッタイ 収録曲】

1. グンモニ
2. スーパースター
3. 花魁道中
4. シャボン玉
5. 絶ッテ
6. 大暴走
7. 嘘
8. 日々草々
9. ハイライト
10. ヒコウキ雲
11. ショウタイム
12. オモチャ箱

◆加藤 普(かとう・あきら)プロフィール
1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70~80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。

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