【書評ウォッチ】「謎のホテル王」ルーツは日本旅館 貴重なノウハウコピーされていた

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   成功した新ホテル王のルーツが実は日本人のライフスタイルに。いかにもありそうな話だが、どうやらどんピシャリ本当らしい。『アマン伝説』(山口由美著、文芸春秋)は、そういう人気のアジアン・リゾートにまつわるノンフィクション。主人公は実在するエイドリアン・ゼッカという謎の創業者だ。

   日本との関係を調べあげた本を「悲しさを感じて、つらくなった」と建築家の隈研吾さんが朝日新聞で嘆く。そのわけは、自分たちの価値や魅力を見過ごしてきた日本人の鈍感さ。貴重なノウハウをいつの間にかコピーされていたというのだから、今さらながら驚かされるのも無理はない。【2013年5月26日(日)の各紙からII】

旅館的サービスから影響を

『アマン伝説』(山口由美著、文芸春秋)
『アマン伝説』(山口由美著、文芸春秋)

   「アマン」は、1988年にタイのプーケットに誕生して以来、アジア各地や中国、米国にも展開するモダンデザインの小規模・高級リゾート群。「気持ちのよさ」がホテルの概念を一変させたともいわれる。仕掛け人のゼッカは公の場に姿を見せないことで有名だ。そのためか、「アマンのルーツは日本の旅館」という噂が一部でささやかれてきた。

   彼の軌跡を追いかけた著者がたどりついたのも、そこ。インドネシアの名家に生まれ、ジャーナリストからホテリエに転じ、アマンを創業するまで。若き日のゼッカは1950年代に日本に滞在した。日本の旅館的サービスや環境との融和から大きな影響を受けたとみられる。

   「一番悲しく見えたのは、登場する日本人達であった」と、評者の隈研吾さん。日本人がゼッカらのずっと後でこのビジネスに参入し、ババをつかまされたことを遠慮なく指摘。「自分の文化に対して自信がなく、乗り遅れた」とシビアにとらえる。各紙読書面にまかり通る無批判型書評にない言及は、高く評価していい読解姿勢だ。それにしても、ああ日本人の要領の悪さ。私たちは足もとの価値を心して見つめなければいけないらしい。

観光地は再生できるか

   ホテル業に限らず観光にまつわる話題を集めた『ときめきの観光学』(澤渡貞男著、言視舎)が日経に。約40年にわたって旅行ビジネスにかかわってきた著者が、実際に各地を歩いた体験から盛衰やキャンペーンの具体例、経済効果などを多面的に。

   中国人観光客の増減に一喜一憂し、「外国人客をもっともっと」とあちこちで叫ばれる時代。観光による地域活性化をめざす動きは絶えそうにない。本は「どうすれば観光地は再生できるのか」を問いかけている。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

   J-CASTニュースの書籍サイト「BOOKウォッチ」でも記事を公開中。

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