2019年 12月 13日 (金)

霞ヶ関官僚が読む本
「ネット選挙」のパワー、日本はまだ知らない アメリカ・スペインにみる「双方向」の重要性

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   今(2013年)夏の参議院議員選挙から、インターネット等を用いたいわゆる「ネット選挙運動」が「解禁」された。長く待たれたこの制度改革により、大仰に言えば「民主主義×ICT(情報通信技術)」の時代が始まるなどと、政策ビジョン用キャッチフレーズのようなことを思ったりもした。

   その参院選が終わってみると、「ネット選挙運動解禁」の影響は限定的だったとの見方が広まっているという印象がぬぐえない。この件について分析書をみたいと思った。

   とはいえ、今回の参院選について分析した書籍が発刊されるには時期が早すぎる。そこで、いささか古いが『インターネットが変える選挙 ――米韓比較と日本の展望』(清原聖子・前嶋和弘編著、慶應義塾大学出版会、2011年)を紹介したい。

「選挙のアメリカ化」という現象

『インターネットが変える選挙 ――米韓比較と日本の展望』
『インターネットが変える選挙 ――米韓比較と日本の展望』

   本書の内容のうちとりわけ興味深いのが、「インターネットが選挙を変えた」事例の分析と、世界中に広まりつつあるという「選挙のアメリカ化」という現象への言及である。

   本書の分析は、有権者がインターネットを介して選挙運動に参加することが可能となったことが「リアル」の選挙情勢に影響した現象を対象としている。この現象に見られる特徴は、インターネットが「単なる情報発信の手段」としてではなく「候補者と有権者」「有権者相互間」の「交流の手段」として使われたことであると本書は指摘する。

   この「インターネットを介した候補者・有権者の相互交流」が、我が国の選挙で言う「風」を巻き起こした、という分析は興味深く感じられる。

   他方本書では、全世界的な選挙運動の潮流を「選挙のアメリカ化」と称している。キーワードは、「メディア中心選挙」「候補者選定における政党の弱体化」「選挙の個人化」「選挙の科学化・専門化」「傍観者としての有権者、アトム化する有権者」の五つである。

   これを整理すると、マスメディアの宣伝力が飛躍的に増大したことで、選挙運動が「政党の組織で候補者を当選させるもの」から「候補者個人が票を集めて当選する」ものへと変質し、これに伴い「特定の候補者個人を当選させる技術」なるものが発達し、「選挙技術のプロフェッショナル」と「外野に置かれた有権者」に二極化したということになる。

   これは、「インターネットが選挙を変える」潮流に対する逆風といえるだろう。

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