【書評ウォッチ】「規制改革」が風雲急 「何が変わるのか」立場読み比べ冷静に判断を

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   規制改革というと、何か新しい社会が開けるような響きがある。果たしてそうか、それともとんだ誤解か。安倍政権がいよいよ拍車をかけようとするなか、改革派の代表的論客が書いた『規制改革で何が変わるのか』(八代尚宏著、ちくま新書)を日経新聞がとり上げた。労働、医療、住宅などさまざまな分野ごとにビジョンを示している。諸情勢を考えると、遠い先の話では、もうない。

   そういえば政府は企業が従業員を解雇しやすくし、残業代も払わずにすむ「解雇特区」作りの規制改革を検討し始めたという。理念の紹介本と実際の政策進行がなんだか並行して?この問題、実はいま風雲急なのだ。皆が気づいた時はすべてが決まっているなんてことはないだろうな。【2013年9月22日(日)の各紙からⅡ】

改革すればどんなによいことが?

『規制改革で何が変わるのか』(八代尚宏著、ちくま新書)
『規制改革で何が変わるのか』(八代尚宏著、ちくま新書)

   規制にはそれなりの理由がある。しかし、グローバル化や情報化、少子高齢化など環境が変わってきたのだから、考え直そう。そうすれば、各分野でどんなにいいことがあるのかを分野ごとのケーススタディ的に考えましたよ。そう本は問いかけているというのが日経の無署名書評。実質11行でコンパクトにまとめてある。過剰な強調や押しつけ的な言い方を抑えている点で説得力もある。

   一方で、この本の出版社サイトは「規制改革は格差を拡大させるという常識が日本に蔓延している」で始まる。改革への反対論・慎重論を抑え込むトーンだ。本は賛否両論の対立点を読み解いていく構成だが、「対立を超えた成長のビジョン」という中立的なうたい文句はどうもちがう。必ずしも悪いわけではないが、結果として衣の下に鎧が見え見えだ。

推進派の考え方を知る資料として

   ただ、この意図はともかく、規制改革についてのきちんとした分析と構想の一冊ではある。読者としては推進派の考え方を知る資料と考えればいい。問題点の整理には役立つ。

   規制改革を推進する政府、財界寄りの本は出回りやすい。それらはほとんどの場合「ビジネス」「新時代」など、耳触りのよい言葉とともに語られる。反対に、慎重論の本は少ない。しかし、たとえば日本労働弁護団の「雇用規制改革に反対する決議」なら、本ではないが、ネット検索でいきつける。読者もバランスをとって情報に接する努力が必要だ。そのうえでムードや言葉に流されることなく自由に、冷静に判断していただきたい。

   政府が検討に入ったという「解雇特区」については、9月21日付朝日新聞朝刊に。「ここまでやるか」という話が出ている。秋の臨時国会で国家戦略法案に盛り込むそうだ。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

J-CASTニュースの書籍サイト「BOOKウォッチ」でも記事を公開中。

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