【書評ウォッチ】世の実態を読者に知らせる意義は大きい ノンフィクションの紹介本

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   ノンフィクションの個性的な著作を紹介する『探訪 名ノンフィクション』(中央公論新社)が読売新聞の小さなコーナーに。自身もその分野で活躍する作家、後藤正治さんが18作を推薦する。敬遠しがちな人にもわかりやすい入門案内になりそうだ。

   本田靖春『不当逮捕』、澤地久枝『妻たちの二・二六事件』、立花隆『田中角栄研究全記録』など、政治経済社会から歴史やユニークな個人の足跡まで硬軟、多彩な題材だ。私的な選び方ではあるが、じっくり読めば考えさせられる秀作・傑作ぞろい。事実を鋭く切りとる取材や執筆姿勢に、読書家の理解が広がることを期待したい。【2013年10月20日(日)の各紙からⅡ】

『不当逮捕』『妻たちの二・二六事件』『田中角栄研究全記録』

『探訪 名ノンフィクション』(中公公論新社)
『探訪 名ノンフィクション』(中央公論新社)

   推理小説ベスト10・名作選といったガイドはよくある。ノンフィクションに限ると、近ごろはあまり見かけない。フィクション文学とは異質の面白さ、インパクトの強さ。何より社会の実態を調べあげて読者に知らせる意義は限りなく大きい。

   本田靖春『不当逮捕』は、読売新聞の記者が、売春汚職報道をめぐって突然逮捕された問題を綿密に調べたノンフィクションの傑作。いま情報保護法制定の動きが強まっているが、言論の自由、メディアの取材、知る権利を考える資料として貴重な一冊だ。講談社文庫にある。

   澤地久枝『妻たちの二・二六事件』は、事件から三十数年後に、首謀者の遺族を取材。そこには保母の資格を取って子供を育てた人や再婚した人、実家と婚家の狭間で苦悩する女性の姿も。歴史の狭間から人の生き方を見つめたドキュメンタリー。中公文庫に。

   総理大臣から刑事被告人へ、波乱の大物政治家を扱ったのが立花隆『田中角栄研究全記録』だ。金がものをいった戦後保守政治の暗部を、厖大な取材データから分析した。政財界に与えた影響という点では、これほど大きな業績はないだろう。講談社文庫。

原発事故の立派なノンフィクションがここにも

   ほかに、沢木耕太郎『一瞬の夏』、大崎善生『聖の青春』、ジョージ・オウエル『カタロニア讃歌』なども。読売「読書情報」欄の評者は無署名。

   ノンフィクションといえば、『福島原発事故 県民健康管理調査の闇』(日野行介著、岩波新書)が朝日新聞に小さく。原発事故の影響を調べる健康調査の偽りや隠匿行為を暴いた毎日新聞記者の記録。2012年7月の朝刊に実態をさらけ出された当事者や政治家からは抗議が殺到したという。これも事実を追った、立派な調査報道だ。圧力に負けるな。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

   J-CASTニュースの書籍サイト「BOOKウォッチ」でも記事を公開中。

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