【書評ウォッチ】捕鯨、タニシ、核融合 復興予算を食い荒らすシロアリの仕組み

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   ズルをやっても知らぬ顔。まして合法的となれば、どいつもこいつも群がって食い荒らす。どうにもケチな根性だが、皆で納めた税金が日本全国であらぬ方向に使われているというのだ。『国家のシロアリ』(福場ひとみ著、小学館)は、大震災復興予算が被災地と無関係の事業にヌケヌケと流用される仕組みを告発した一冊だ。

   その後報道された事実も加えると、霞が関合同庁舎の修繕費から次世代原子力の核融合計画、捕鯨のシーシェパード対策や節電機器の購入補助制度、鹿児島のタニシ駆除まである。使われたのは、皆が「被災地のためなら」と納めた税金だ。おまけに発覚しても国庫に戻されるのは一部だけ。たちの悪いシロアリを駆除する薬はないものか。【2014年2月23日(日)の各紙からⅠ】

復興にかこつけて予算を分捕る

『国家のシロアリ』(福場ひとみ著、小学館)
『国家のシロアリ』(福場ひとみ著、小学館)

   著者は週刊ポストの記者。2012年7月に流用に気づき、取材を始めた。といっても、隠れた機密情報を暴く緊迫のやり取りでは、どうやらなさそうだ。各省庁や自治体の予算書は公開される。そこに復興予算を食いつぶす無関係事業が、あっちにもこっちにも。

   それはそうだろう。捕鯨対策やタニシ駆除や遠く離れた庁舎の改築を「これは復興事業でございます」とは小学生だって言うはずがない。

   ところが、役人の世界では「違法ではございません」と、大の大人が涼しい顔で。基本方針の拡大解釈。無茶な屁理屈が国でも地方自治体でも天下り外郭団体でも、公然とまかり通る。要するに、復興にかこつけて、自分らの縄張りに予算を分捕ったのだ。

まるで「やり得」働きアリがシロアリに

   他人の家を餌に食い荒らすシロアリ行為。この流用がなぜ、どうして起きたのかを本は解説していく。個々の役人は有能で仕事に忠実な「働きアリ」だと著者は見る。しかし「組織における働きアリが、国家にとってはシロアリと化してしまうのが、この国の現実である」という分析は冷静で、納得できる。だからといって許されるものではない。「一頁ごとに怒りがこみ上げてくる」と朝日新聞の評者・田中優子さん。

   もっと問題なのは、流用が明るみに出てもなお「今さらやめられない」と続く事業があること。「もう使ってしまった」と予算を戻そうとしない自治体がそれですんでいること。誤りと分かれば全額弁償するのが、常識だろうが? これでは、まるで「やり得」だ。

   おかしなシステムに、この国はなっている。そこに巣くう「シロアリ」とは、実態になんともピッタリのネーミング。陰湿で図々しく、害が大きい。やはり許してはならない。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

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