2024年 4月 25日 (木)

20世紀で最も影響力のあったミュージシャンの一人 ピート・シーガーの死

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『エッセンシャル・ピート・シーガー』
『エッセンシャル・ピート・シーガー』

ピート・シーガー
『エッセンシャル・ピート・シーガー』
MHCP-755(通常盤)
1785円
2005年6月22日(既発)
ソニー・ミュージックダイレクト


   昨年の夏以来、これといった音楽と巡り合うことがなかった。

   表層を流れる情報は、誰かがその一部を切り取って見せる必要などどこにもないほどにネット上に溢れ返っていて、雪崩のように音を立ててランキングを形成している。

   その様は、日々少しも変わらない。

   そうした中、目立ったのは、昭和の音楽シーンをそれまでの演歌・歌謡曲から解放し、平成の今、世界と拮抗できるポップスへと舵取りしてきたミュージシャンの訃報だった。

年末の大滝詠一、明けて佐久間正英…大きな喪失感

   ナイアガラの大滝詠一。昔を知る人なら「はっぴーえんど」の、と言った方が話は早い。

   暮れも押し迫った2013年12月30日午後5時半ごろ、東京都瑞穂町の自宅で倒れ、そのまま帰らぬ人となったという。享年65。死因は解離性動脈瘤だったそうだ。

   日本の音楽シーンに残したものは本当に大きく、「日本語のロック」を目からうろこが落ちるように見事に体現し、大滝の参加していたはっぴーえんどの登場以降、「日本語のロックは成立するか?」などといった論争は皆無になった。それ以降のミュージシャン、プロデューサーとしての活躍は、ご存じのとおりだ。

   大滝の死に呆然とするうちに、紅白も上の空で眺め、年が明けて気持ちも落ち着いた14年1月20日頃に佐久間正英の訃報が伝えられた。16日午前2時27分、胃がんで亡くなっていたのだ。61歳。BOOWY、GLAYのプロデューサーとして知られるが、筆者にとってはP-MODELの1stアルバムでのサウンド・プロデューサー、そして後々知るのだが、高校の後輩でもあったことで、妙な親近感を持っていた。もちろん伝説ともいえる四人囃子のパフォーマンスも忘れ難い。 自分の中で大きな部分を占めていたミュージシャンの死は、大きな喪失感がある。

13年10月にはルー・リードが

   13年の10月27日には、海の向こうからルー・リードの訃報が届いた。ベルベット・アンダーグラウンドの中心メンバーであり、ニューヨーク・アンダーグラウンド・ロックの帝王、のちのニューヨーク・パンク・シーンの生みの親と言ってもいいほどの存在だった。71歳。訃報を聞いた時は、腰の力が少し抜けた。

   そして、極めつけ。

   もうほとんど知る人も少なくなっている、アメリカの1940年代、50年代フォークの牽引者で、ウディ・ガスリーと並び称され 後のボブ・ディラン、ジョーン・バエズ、さらにはブルース・スプリングスティーンといったスターに大きな影響を与えたピート・シーガー(ウィーバーズというグループで活動)の訃報が、この1月27日に舞い込んできた。94歳。老衰かな?

40・50年代牽引、60・70年代に通奏低音のごとく…

   アメリカの60年代、70年代を象徴する「ベトナム戦争」。その戦争へのプロテストソングとしてリンクした「花はどこへ行った」「天使のハンマー」「ターンターンターン」などの政治的色彩の濃いフォークの生みの親こそが、ピート・シーガーであり、キング牧師の公民権運動のテーマソングとでもいえる「ウィ・シャル・オーバーカム (We Shall Overcome)」を世に送り出したのも、また彼だった。

   なぜピート・シーガーをここで取り上げるのか? 理由は簡単で、大滝にしても佐久間にしても、ルーリードにしても、意識するとしないとに関わらず、60年代、70年代のミューシャンは、すべてがピート・シーガーの影響を受けているからだ。そしてウッディ・ガスリーの影響を。

   今のように、エンターテインメントに特化し、政治的あるいは哲学的な彩りの一つもない音楽とは違って、昔々の音楽には、連綿と通奏低音の如くに共感しあう何ものかが存在したのだ。そして、その通奏低音を鳴り響かせることのできたミュージシャン・アーティストを、人々は巨匠と呼んだ。

   ピート・シーガーの死とは、まさに巨匠の死、一つの時代が丸ごと終わったと同義なのだ。

   だからここで、ピート・シーガーの残した音源を(まだ売られていると、思う)。

   1か月遅れの、合掌。

加藤 普

【エッセンシャル・ピート・シーガー 曲目】

1.天使のハンマー
2.グッドナイト・アイリーン
3.バーバラ・アレン (ライヴ)
4.トーキング・ユニオン
5.ウィムウェ (ライヴ)
6.ジョン・ヘンリー (ライヴ)
7.リトル・ボックス (ライヴ)
8.漕げよマイケル (ライヴ)
9.わが祖国 (ライヴ)
10.グアンタナメラ (ライヴ)
11.花はどこへ行ったの
12.ターン・ターン・ターン (ライヴ)
13.リムニーのベル (ライヴ)
14.ウェイスト・ディープ・イン・ザ・ビッグ・マディ
15.勝利を我らに (ライヴ)

◆加藤 普(かとう・あきら)プロフィール
1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70~80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。

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