2024年 4月 17日 (水)

【今井亮太郎インタビュー】
ブラジリアン・グルーブを余すことなく感じさせてくれる至極の1枚

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『ピアノ・バトゥカーダ』
『ピアノ・バトゥカーダ』

今井亮太郎
『ピアノ・バトゥカーダ』
OMCA-1180
2,381円+税
2014年3月5日発売
オーマガトキ/コロムビア・マーケティング


   ブラジリアン・ピアニスト=今井亮太郎のニュー・アルバムが完成し、2014年3月5日にリリース。前作『ピアノ・ジョビン』はアントニオ・カルロス・ジョビンという稀有のブラジリアン・ミュージシャンへのリスペクトを込めた作品だったが、今回はさらに今井自身の音楽のアイデンティティ、ブラジル音楽への強烈なリスペクトを音にしている。それが熱を感じさせ『黒いオルフェ』に匹敵するような、圧倒的なブラジル音楽の圧力を感じさせてくれるのだ。アルバムに込められた思いを聞いた。

"バトゥカーダ"=叩く=打楽器隊

ピアノで自身の鼓動(バトゥカーダ)を刻んだという今井亮太郎
ピアノで自身の鼓動(バトゥカーダ)を刻んだという今井亮太郎

   今井亮太郎の最新アルバム『ピアノ・バトゥカーダ』を聴いて、真っ先に思い浮かべたのは、リードにも書いたように1959年に公開されたマルセル・カミュ監督の映画『黒いオルフェ』だった。70年代にジャマイカのジミー・クリフ主演映画『ハーダー・ゼイ・カム』が、カリブ海のローカル・ミュージックだったレゲエを世界的な音楽潮流に成しえたのとよく似ていて、映画そのものへは様々な評価があるだろうが、リオのカーニバルを背景にショーロ、サンバ、ボサノバというブラジル音楽を、50年代に広く世界に知らしめた映画でもある。

「"バトゥカーダ"は"叩く"という意味。打楽器隊の集まりのこと。実はバトゥカーダが最も生き生きするのはカーニバルの時。カーニバルに参加する1チーム5000人の内、500人は打楽器隊ですから」

   その打楽器隊を意味する言葉そのものを、タイトルにしてしまった。

「ブラジルは人種、自然の坩堝であり地球の縮図のような場所。その、人と大地のエネルギーをもっとも端的に表しているのがカーニバルであり、バトゥカーダ。大地の鼓動、躍動感がみなぎっている」

テーマは「生きること」

   前回のインタビューでも語られたことだが、今井はブラジルで生活してきている。そんな経験の中でこんなことを感じていた。

「生きる強さ、生きていく強さ。あの大地とあの人々がいるから生まれた強さ。そしてそれを端的に表しているのが、やっぱりバトゥカーダ」

   ブラジルへの思いを素直に言葉にした結果のアルバム・タイトルなのだ。だが、タイトルは"ピアノ(メロディー)"と"バトゥカーダ(リズム)"という一見矛盾する言葉の組み合わせだ。

「僕の中では決して矛盾しない。むしろ一つになる。僕自身は小さい頃からピアノを弾き、20歳になってブラジル音楽と出会った。ピアノは僕のアイデンティティ。ピアノを弾くと自由になれたし、ピアノを弾くことは僕自身の鼓動(バトゥカーダ)を刻む=生きるのと同じこと」

   「だから」と、今井は続ける。

「選曲も『生きていく』ということをテーマにした。ブラジルのリオでは色々な人が生活し、生きていて、傷つくことでさえ明日生きる力になる、様々な場面にそれぞれのバテュカーダがあるというようなイメージで、自分の曲も含めて選曲した」

   今回のアルバムでは、「色」もとても気になった。曲タイトルの多くから様々な色を感じたのだ。

「色彩感覚はいつも大事にしている。このアルバムでも空や海の青、愛と理性を現した赤と黒、透明という色などでモザイク感を出したかった。生きる時に付きまとうモザイク感」

   ブラジルという人種や大地のカオスの中から生まれるエネルギーを表現したかったという。色はそのエネルギーの表象。

今年はワールドカップ年! このアルバムを聴いて大いに盛り上がろう!!

   このアルバムには、ブラジルの至宝=ジョイス(・モレーノ)が参加している。

「日本とブラジルで同時録音。データのやり取りで、まず僕のピアノとドラムを録音してブラジルに送り、そのリズムをベースにジョイスがギターと歌を録音し送り返してくれたものに、さらにリアレンジを加えて、日本で仕上げた。データのやり取りを興ざめという人もいるかもしれないが、例えばブラジルに行って録ったとしても、日本で録ったとしても、結局は同じ作業をするわけで、別の考え方をすれば時空を超えて一つになるというある意味高度な作業の成果」

   なにしろ、ブラジル音楽のグルーブ感は、一筋縄ではいかない。簡単に言えばグルーブの違いは大縄跳びに飛び込むのを躊躇する感覚に近い。それをデータでやり取りできることこそ、今井の生み出すグルーブが本物であることの証に他ならない。

「アルバムに参加してくれたパンディロ(ブラジル風のタンバリン)の第一人者=セウシーニョ・シウヴァは、言ってみれば日本の梨園の家系のような伝統あるリズムを支える家系の棟梁。彼と一緒に演れるようになったのは、ここ数年」

   そして、このアルバムにフルートで参加している赤羽泉美さん、ヴォーカルの渡海真知子さんもまた、日本でブラジル音楽を支えるグルーブを持った得難いミュージシャン。

「今年はワールドカップがブラジルで開催されるけれど、なにか皆でうってつけのアルバムを作れた感じ」

   まさに! このアルバムを聴きながら、SAMURAI BLUEを応援するのも、大いにあり!!

加藤 普

【ピアノ・バトゥカーダ 収録曲目】
1. ブルー・フライト
2. バトゥカーダ・スルジウ
3. サマー・サンバ
4. 赤と黒のイスピラル
5. サンバ・ジ・ジャネイロ
6. 透明な砂
7. ピアノ・バトゥカーダ
8. 彼女はカリオカ feat.Joyce Moreno
9. おいしい水
10. ア・リラ
11. 予感
12. 夜明け前の翼 feat.Izumi Akahane
13. マシュ・ケ・ナダ feat. Machiko Watarumi
14. 空へ
15. ピアノ・バトゥカーダ(リプライズ)


◆加藤 普(かとう・あきら)プロフィール
1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70~80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。

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