【書評ウォッチ】「コミュ力+即戦力+グローバル」を強要されて 「普通の幸せ」じゃダメなのか

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   「コミュニケーション能力をもった即戦力のグローバルな人材」を企業は求めているのだそうだ。こういうビジネスヒーロー像を若者におしつけるなと『「できる人」という幻想』(常見陽平著、NHK出版新書)が異議ありの手をあげた。

   就活シーズンに繰り返される決まり文句。それほどの人材がどこまでいるのかも怪しい話で、大人側の勝手な価値観。少しでも、それらしく見せようと迷走する若者が気の毒だ。国際化やIT技術の進展は事実だろうが、その中で「普通の人」の働き方を考えた一冊。まずは年長者や企業が読むといい。【2014年5月25日(日)の各紙からⅠ】

「キャリア」「スキル」の飾り言葉に尻つつかれて

「できる人」という幻想
「できる人」という幻想

   著者は1974年生まれの人材コンサルタント。入社式で語られる社長訓示を調べることから本書を書きだす。そこに企業のリーダーたちが欲しがる人物像が浮かび出る。それはしかし、学生を「できる」ビジネスパーソンに変える一方通行のセレモニー。中高年ができなかったことを要求し続けてきたのが実態ではないか。

   そう指摘されて思えば、企業が採用でよく重視するという「コミュニケーション能力」も、語学か協調心かITその他の技術か、はっきりしないまま世にはびこっている。

   今の学生たちは就活時期までに「コミュ力」を備え、入社後は「即戦力」となり、ゆくゆくは「グローバルな人材」として世界に羽ばたかなければならない。「キャリア」「スキル」などの美しい飾り言葉で尻をつつかれて。現代の若者は、もう大変。

   そういう企業の枠を超えろと勧める評論家や諸先輩もいるのだが、彼らが若者に求めるものは、今度は「起業」。その多くがやはり国際社会での躍進を鼓舞する。

   「イノベーション」「国際ビジネス」「ノマド」「独立」から果ては「富裕層」と、ここでも魅力的な刺激言葉でスキルアップを強要される。一方で「普通」を基準にする働き論はどうも目立たなかった。「その考え、ちょっと待てよ」という異論・異見があっていい。

若者の可能性を実は縛る社会になっていないか

   著者は、「即戦力」はどこにいる? 「グローバル人材」とは誰? 「起業家」は英雄なのかと問いかける。一つ一つうなずける問題提起だ。若者の可能性を強調しながら、実は自由を縛っている社会になってはいないか、冷静に見つめる必要がある。「普通の人の普通の幸せを応援したいとの姿勢」と、読売新聞の「佑」1字の書評も支持している。

   『<働く>は、これから』(猪木武徳編、岩波書店)は、研究者6人が労働環境の変化を分析、雇用政策を提言する。毎日新聞の書評はきまじめだが、長すぎる。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

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