【書評ウォッチ】男の性=射精、自慰、初体験、風俗、結婚 逃げず、とぼけず根本から

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   世の中にあふれているのに、正面きっては語られてこなかったもの。男の性は確実にその一つだろう。『男子の貞操』(坂爪真吾著、ちくま新書)が、逃げず、とぼけず、男たちの「射精」「自慰」「初体験」「風俗」「恋愛」「結婚」を根本から問いつめていく。エロや欲望、モテる・モテないばかりで仕切られてきた問題。なぜきちんと語られてこなかったかを考えると、メディアや企業、老人、ときには女性の価値観や古い精神論が透けて見える。誰にどう言われようと男の性は間違いなくあるのだから、男自身がまずしっかり受けとめようと呼びかけた意欲作だ。【2014年6月29日(日)の各紙からⅠ】

刺激的なセックス記号がはびこる

『男子の貞操』(坂爪真吾著、ちくま新書)
『男子の貞操』(坂爪真吾著、ちくま新書)

   セックスの話題は世につきない。女性に関する本は、内容や評価はさまざまにせよ、数は出てきた。一方で、男の性を真剣に分析した本は少ない。そこには何か気恥ずかしい、かっこうわるい、大人げない「今さら何を?」のイメージがつきまとう。しかし、男の日常とこんなに強く関わるものはないのだ。

   日本でも世界でも、なぜ男は性を買うのか。売春・買春、ビデオやインターネットのアダルトサイト。そうした「射精産業・欲望装置」の問題だけではない。女性と向き合うと、たいての紳士がつい性的な視線で見てしまう。男性自身が一番よく知っているはずだ。

   それらを語ることが事実上タブー視されてきた。政治や企業の露骨な弾圧はないけれど、それ以前に多くがこそこそと自ら腰を引いてしまう。長い歴史を持つ、静かで強力なタブー。おかげで「巨乳」「女子高生」「無修正」「AV」といった刺激的なセックス記号がはびこり、男たちが振り回される。やがて恋愛やセックスをゆがんで受けとめるか、関心を持たなくなるかの現状を本書は臆せず指摘する。

初体験― 最も個人的な体験が、最も社会的な体験である
性風俗―「利用するもの」ではなく「反面教師にして学ぶもの」

「過度に崇めず、蔑まず」

   こうした切り方に、読む人の賛否は分かれるかもしれない。ただ「必要なことは、セックスを過度に崇めたり、過度に蔑んだりせずに、毎日の生活の中で自分の性、そして他者の性と付き合っていくスキルを身につけることです」という著者の主張は、本来当たり前のことなのに、妙に新鮮だ。

   「わかっちゃいるが、そう理屈どおりにはいかないのが性である」という読売新聞の評者・渡辺一史さんは「スタートラインとなりうるような画期的労作」ともとらえている。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

   J-CASTニュースの書籍サイト「BOOKウォッチ」でも記事を公開中。

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