【書評ウォッチ】鯨に生かされてきた思い この文化を手放すものか

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   南極海の日本の調査捕鯨を禁じる判決を、国際司法裁判所が出した。『鯨塚からみえてくる日本人の心3』(細川隆雄編著、農林統計出版)が、日本人の文化を欧米の価値観でバッサリやられていいのかという思いを新たにさせてくれる。愛媛大学農学部の教授と学生たちが国内各地に人と鯨の関わりをたずね歩いた調査旅行記だ。

   肉や油をもたらし、貧しいへき地をたびたび救ってくれた鯨に、人々は感謝と畏敬の祈りをささげた。この大型動物をまつる素朴な石碑は、自然との、西洋とはちがうつきあい方があることを示している。豊かな鯨文化を手放してたまるか。【2014年7月6日(日)の各紙からⅠ】

捕鯨禁止論の勝手な価値観

『鯨塚からみえてくる日本人の心3』(細川隆雄編著、農林統計出版)
『鯨塚からみえてくる日本人の心3』(細川隆雄編著、農林統計出版)

   鯨にまつわる史跡は、日本各地にあるそうだ。地域の浜辺や崖の一角にひっそりとたたずんで、今ではその存在さえ多くの人が知らない。愛媛大学のグループはそこに込められた人々の気持ちを見出そうと佐渡や能登を回った。

   鯨の石碑とひとことでいっても、高さ2メートルを超える墓石も、「南無阿弥陀仏」の文字が刻まれたものもある。鯨の位牌を置く寺や、殿様級の最高ランクの「院殿」「大居士」の戒名が与えられていたことも。これらを記録した前作、前々作に続いての3冊目だ。鯨のおかげで食足り、鯨油も得て「いかされてきた」との思いを編著者たちがまとめた。

   こういう心を欧米人は理解できるだろうか。彼らは「大型哺乳類を守れ」とは言いながら、牛や豚なら感謝や畏敬など感じることもなく食べまくる。それで反捕鯨を倫理的、科学的論理だと強調する彼らが、科学的な評価のための調査捕鯨を勝手な価値観で禁止する。国際司法裁判所の判決に納得する人は少ないだろう。

   鯨を供養し祭る行為に「高い精神性」を認めた愛媛大の調査は、鯨文化論に地味ながら確固とした根拠を示す。ただし「日本人自身がこうした鯨文化の全体像を忘れかけ、発信できなくなっていることが、国際的な日本の捕鯨への逆風の一因かもしれない」と、毎日新聞の「中」一文字署名の評者。本は日本人自身のありようをも問いかけている。

豪雨もたらす雲の研究

   『雲の中では何が起こっているのか』(荒木健太郎著、ベレ出版)が朝日と東京・中日新聞に。ときにはゲリラ豪雨をもたらす雲のでき方や謎、おもしろさを語る。

   竜巻や局地豪雨・豪雪などがばかに身近になったかのような昨今、雲の中を探る研究はもっと知られていい。間違えなく「地球は雲の星」なのだ。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

   J-CASTニュースの書籍サイト「BOOKウォッチ」でも記事を公開中。

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