2024年 4月 26日 (金)

未知の感染症を「適切に恐れる」ために

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メディア対応が最大の課題―事前に付き合い方を決めておく―

   ソーシャルメディアが広がっているとはいえ、リスコミを考える上で、依然、マスメディアの果たす役割は最も大きい。したがって、マスメディア対応がリスコミの成否を分けるといっても過言ではない(特に失敗する場合)。

   著者が指摘するように、マスメディアは、情報の出し手が発信した通りに報道するとは限らない。むしろ、聞き手を面白がらせたり、脅かしたりすることを意図して、「煽る」行為すら行うことがある。エンターテイメント性が目的化し、「視聴率を伸ばしたり、発行部数を上げること『そのもの』が、リスク・コミュニケーションの本来の目的=リスク・マネージメントに優先され」る場合があるのだ。

   加えて、こうした性向が、感染を疑われた患者やその家族のプライバシーを危うくする危険性もある。マスメディア側の「知りたい」、「伝えたい」という思いと、どう折り合いを付けていくかが情報発信側には求められている。

   本書では、記者会見への対応についても、多くのページが割かれている。

「記者会見はタフな営為です。緊張しますし、相手のフラストレーションや怒りとも対峙しなければなりません。大勢の記者たちに「お前が悪い」という目で睨まれながら質疑を行うのは、そうとうの精神的なタフさを必要とします」
「記者会見の前は十分に睡眠をとり、食事をとり、水分をとっておく必要があります(トイレにも行っておきましょう)。こういうときに限って、不眠不休で対応してしまいがちですが、記者会見でもっとも重要なのは、クリアな頭脳と持久力なんです。睡眠不足はその両方を奪ってしまいます」

   感染症対策上、マスメディア対応は、政府にとっても、医療機関にとっても、最もエネルギーを要するものだ。メディア対応に忙殺されるあまりに、本来の感染症対策が後手に回るといった本末転倒な事態は避けなくてはならない。

   著者が指摘するように「(あらかじめ)メディアとのつき合い方を決めておくのも、タイム・マネジメント上、非常に大事なポイント」となる。万一の時への備えが何より重要なのだ。

厚生労働省(課長級)JOJO

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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