2024年 5月 5日 (日)

フランス国歌が遠くで聞こえるドビュッシーの前奏曲

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最後の数小節にさりげなくフランスへの愛を込め...

   20世紀に入ってから10年ほどたったころ、つまり今からちょうど100年ぐらい前、円熟期を迎えたドビュッシーは、ピアノのための「前奏曲集」を企画します。前奏曲を24曲作り、前奏曲集にするというアイデアは、古くは24の長調・短調すべてで前奏曲とフーガを書いたJ・S.・バッハのものですが、ロマン派のショパンなどもそれを意識した前奏曲集を書いています。ドビュッシーは12曲ずつ第1巻と第2巻に分けたため、両方合わせて24曲なのですが、第2巻の一番最後に置かれたのが「花火」という曲です。

    この「花火」は、ドビュッシーの時代には、既に祝日として定着していた、7月14日の革命記念日の夜の花火なのです。現在も7月14日の晩に、パリで打ち上げられ、テレビで中継されたりします。ドビュッシーは、フランス最大の祝日の夜空に打ちあがる花火の模様を、大変技巧的なピアノのパッセージで表現しました。あたかも絵画か動画を見ているように「花火」を音で描いたドビュッシーは、本人は嫌っていたとのことですが、「印象派」と呼ばれるのに相応しい素晴らしい作曲家といえましょう。

    そして、花火の華麗なる共演をたっぷり聴かせたあと、祭りの余韻の中で、最後の最後に、遠くから聴こえてくる人々の歌声が、右手によって小さな小さな音で弾かれます。フランス国歌「ラ・マルセイエーズ」のクライマックスの一部分です。本当に一瞬だけ、一節だけなので、知らなければ聴き逃してしまうほどです。

   彼は、前奏曲集の最後の曲の最後の数小節に、とてもフランス的に...つまり、大変さりげなく、祖国への愛を込めたのです。このセンスがフランス、という自負を持って。

本田聖嗣

本田聖嗣プロフィール

私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でピルミ エ・ プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソ ロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目CDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラ マ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを 務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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