小さい子に読み聞かせるものというイメージが強かった「絵本」だが、近年では大人が読んでも心に響く、「大人向け絵本」も定番となりつつある。そんな「大人向け絵本」で、ネット上でにわかに「内容が怖い」と話題になっている作品がある。くまのぬいぐるみがどんどんボロボロに話題となったきっかけはこのツイートだ。子ども向け絵本じゃないでしょこれホラーすぎるpic.twitter.com/rW5xOuh9M6—まめだいふく(@pipipoyon06)2016年6月9日添付されている写真を見ると、真っ赤な背景にどんどんボロボロになっていくくまのぬいぐるみ、「しんでびびらせるか」という言葉など、確かに衝撃的といえる内容だ。この絵本は、MOMOさん著/YUKOさん絵の「わかってほしい」(クレヨンハウス、2003年12月発売)というもの。ページを開くと、まず「この本を書いたのは虐待が少しでもなくなればという思いと、自分を変えるためです。」というメッセージが目に飛び込んでくる。「なんのためにうんだの?」「ねがいはひとつだけわかることはひとつだけあいされたい。」といった痛切な訴えとともに描かれたくまのぬいぐるみは、ページを追うごとに傷付き、腕が取れ、しまいには顔もなくなってしまう。最後のページには、「虐待をする親でも子どもにはそのひとしかいない。このことをどうかわかってほしい。こころから。」とのメッセージがつづられている。著者自身も虐待を受けていた絵本には、著者のMOMOさんと、クレヨンハウス主宰の落合恵子さんとの対談が同封されている。それによると、MOMOさん自身、父親から虐待を受けていたという。幼い頃は「自分が悪いことをしたから殴られるんだ」と思っていたが、高校生になると、鉄の棒で殴られるなど暴力がひどくなり、「虐待」と気付いたそう。しかし逃げる術もなく、父親が辛い思いをしたり警察に連れて行かれたりするのが嫌なのもあり、声を上げずにいた。そうした記憶と向き合いながら絵本を書くのは苦しかったというが、「過去の虐待の体験を大人になっても引きずっているひとたちへのメッセージになれば」「多くのひとに、虐待されている子どもの気持ちを知ってもらって、虐待が少しでもなくなれば」との思いで、出版を決意した。MOMOさんは、「この絵本を、傷ついたり悩んでいるひとに、そして自分は虐待とは関係ないと思っている大人にも見てほしい」と訴えかけている。
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