『中央銀行がわかれば世界経済がわかる』 どんな組織? 何をしている? 功罪は?

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   ニュースで、日銀や連邦準備制度(FRB、またはFED)という名前を耳にすることが多くなってきた。中央銀行のことだ。

   彼らはいったい何をやっているのか。どんな組織なのか。Q&A形式で答えたのが『中央銀行がわかれば世界経済がわかる』(増田悦佐著、ビジネス社刊)だ。

『中央銀行がわかれば世界経済がわかる』(増田悦佐著、ビジネス社刊)
『中央銀行がわかれば世界経済がわかる』(増田悦佐著、ビジネス社刊)

通貨供給を独占

   やさしい入門書のように見えるが、著者の語り口は辛らつだ。

「中央銀行ほど表向きの立派な姿と実態が違う組織、めったにないと思います」
「中央銀行は世界中のほとんどの国で弊害が多いとして禁止されている独占を、通貨供給の分野で公認されている組織です」

   そしてこう続ける。

「この特権を認めていただいているお礼に、政治権力を握る国王や大統領や国会議員や高級官僚、経済的に有利な立場にある一流企業や大手金融機関やお金持ちは得をし、庶民は損をする世界をつくりだし、維持しています」

   世界最初の近代的な中央銀行であるイギリスのイングランド銀行。あるいは現代初の中央銀行たるアメリカのFRB。その誕生のいきさつを振り返り、かつては「植民地支配のための資金調達」、現代半ばまでは「戦争のための資金調達」が中央銀行の役目だったと指摘する。そして最近では、「慢性インフレの維持」を言い出していると。

   著者は、「インフレこそ、国、一流企業、大手金融機関、大金持ちといったいつでも、いくらでも、何回でもカネを借りられる組織や人に有利で、自由にカネを借りられない庶民には不利な仕組み」と批判し、「金持ちをますます豊かに、貧乏人をますます貧乏にしてきたのが中央銀行の正体」と言い切る。

近現代史の副読本に

   一般にエコノミストや経済評論家と言われる人は、政府や経済界寄りの発言が多いが、著者は怖いもの知らず。歯に衣着せぬ辛辣な批評で知られる。

   日銀・黒田東彦総裁についてはこんな具合だ。

   「金融政策で経済の流れを変えることなどできない」という正論を頑として曲げなかったのが白川方明・前総裁。その後任として、「政府のおっしゃることなら、たとえ不可能なことでも気合いでやって見せます」と手を挙げたのが黒田氏だ――。

   1949年生まれ。一橋大の大学院を経てジョンズ・ホプキンス大学院で歴史学・経済学の博士課程を修めたあと、ニューヨーク州立大学助教授を経て帰国。外資系の大手金融機関で建設・住宅・不動産のアナリストなどを務めた。トップアナリストとして専門紙でも高い評価を得ていた時期もある。日本と米国のアカデミズムと実体経済の両方を経験し、豊富な歴史知識や文明論をベースにしながら現状分析に踏み込む。ジャズやアニメにも詳しく、広い視野と多彩な切り口で論評する異色のエコノミストだ。

   あとがきで、「世界経済における覇権の変遷はけっしてきれいごとではない」「日本でふつうに教えられている近現代世界史が、あまりにも一方的で勝者の立場を正当化する論理で書かれてきたのではないかという不満があった」と書き、「この本は・・・近現代史の副読本としてもお読みいただけるように工夫した」と記している。

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