三戸なつめの素顔、Perfumeや きゃりーぱみゅぱみゅとの違い

印刷

   【タケ×モリの「誰も知らないJ-POP」】

   「前髪切りすぎた」という曲をご存知だろうか。

   歌っているのは、関西の服飾専門学校時代に雑誌の「読者モデル」で人気になった三戸なつめ。2017年4月26日に発売になった彼女のファーストアルバム「なつめろ」の一曲目。彼女のデビューシングルでもあった。

    近未来的なサウンドと「前髪を切りすぎた」と繰り返される歌詞。「おでこがこんにちは」という人なつっこい表現ともども、これ以上ない自己紹介ソングだった。作詞作曲とプロデユースはPerfumeやきゃりーぱみゅぱみゅで知られる売れっ子、中田ヤスタカである。

trend_20170515131305.jpg

女の子がまねしてくれる

「中学生の時に、鏡を見ていて、人と違う何かがしたい、と思って自分で切ってからずっとこの髪型だったんで、ヤスタカさんからこの曲をもらうまでは切りすぎと思ってなかったんです。でも、テレビなんかでも面白がってもらえるし、女の子が真似してくれたりするんで、この髪型にして良かったと思います」

   彼女は、筆者が担当しているFM NACK5の「J-POP TALKIN'」(土曜日22時~22時30分)のインタビューで、そう言った。

   彼女の話を聞いていて、今更ながら知ったことがあった。「読者モデル」ということについてである。

   2000年代の前半に木村カエラがデビューした頃からだろうか。「読者モデル出身」という言葉を目にするようになった。三戸なつめと同じ事務所のきゃりーぱみゅぱみゅもその一人だ。若い女性の間では常識なのだろうが、そういう年代ではない。雑誌の読者がモデルとして登場する。プロのモデルにはない親近感が受けているということなのだろう、と思っていた。ただ、彼女の説明は、こうだった。

「読者モデルの基本は全部自己プロデユースなんです。好きなコーディネイトで発信するんで、衣装は私服。スタイリストもヘヤメイクもつきません。全部自分で考える。だから結構大変です(笑)」

   素人の良さ、という程度の話ではない。スタイリストやヘアメイクがあれこれ考えてくれるプロのモデル以上のセンスや個性が問われてくる。彼女の身長は152センチ。それでも「青文字系」雑誌人気ナンバー1の読者モデルになった。雑誌の編集部にすれば、周辺スタッフが要らない分、経費削減にもなる。「だと思います。私たち、低コストな人物(笑)」

   読者モデル出身、という人たちは、自己プロデユース能力の高さで、プロのモデルにはない存在感を獲得してきた女性、ということになる。彼女たちが音楽でも成功する例が多いのは、そんな発信力の高さの表れと言って良さそうだ。彼女は、ジャケットのイメージを「オシャレで可愛いんだけど、何コレ?という違和感のあるものにしたかった」と言った。アルバム「なつめろ」は、iTunesのエレクトロニック・アルバム・チャートで1位。好感度ぶりを見せつけていた。

サウンドは近未来でハートは等身大

   ただ、彼女が、同じ中田ヤスタカプロデユースでありながら、Perfumeやきゃりーぱみゅぱみゅとも少し違うのは、曲の持つ温度感だろう。アルバムのタイトル曲「なつめろ」は、テクノタッチのポップなサウンドに昭和歌謡を思わせる哀愁感のあるメロディがついている。歌われている情景もどこか懐かしい。一見ミスマッチのような組み合わせの面白さ。アルバムの中には、彼女が読者モデルで貯めたお金を元に大阪から上京してきた頃の心理風景が歌われているような曲もある。

   「そんな話は一言もしたことがないのに、なんで分かるんやろ(笑)」。サウンドは近未来でハートは等身大。「将来の夢は文房具屋さん」という庶民性も関西人ならではかもしれない。

   すでにフェスにも出演している。「こんなに気持ちいいんだ、こんなにハッピーなんだと思いました」「中学の時にあがり症で、大きい舞台に出ることなど考えられなかった」というステージ度胸は、読者モデルの産物以外の何物でもないだろう。5月21日からツアー「なつめろLIVE TOUR~三戸なつめは超オメデタイ~」がスタートする。東京は渋谷のTSUTAYA O-EAST。全9本はすべてライブハウス。会場には、同じように前髪を切りそろえた女の子が集まりそうだ。そんなに至近距離で見られるのも今のうちかもしれない。

   ちなみに「赤文字系」というのはお嬢様セレブ系女性誌で「青文字系」は、サブカル系ファッション誌を意味するという説明は、念のため、だ。

(タケ)

タケ×モリ プロフィール

タケは田家秀樹(たけ・ひでき)。音楽評論家、ノンフィクション作家。「ステージを観てないアーティストの評論はしない」を原則とし、40年以上、J-POPシーンを取材し続けている。69年、タウン誌のはしり「新宿プレイマップ」(新都心新宿PR委員会)創刊に参画。「セイ!ヤング」(文化放送)などの音楽番組、若者番組の放送作家、若者雑誌編集長を経て現職。著書に「読むJ-POP・1945~2004」(朝日文庫)などアーテイスト関連、音楽史など多数。「FM NACK5」「FM COCOLO」「TOKYO FM」などで音楽番組パーソナリテイ。放送作家としては「イムジン河2001」(NACK5)で民間放送連盟賞最優秀賞受賞、受賞作多数。ホームページは、http://takehideki.jimdo.com
モリは友人で同じくJ-POPに詳しい。

  • コメント・口コミ
  • Facebook
  • twitter
コメント・口コミを投稿する
コメント・口コミを入力
ハンドルネーム
コメント・口コミ
   

※誹謗中傷や差別的発言、不愉快にさせるようなコメント・口コミは掲載しない場合があります。
コメント・口コミの掲載基準については、コメント・口コミに関する諸注意をご一読ください。

注目情報PR
追悼
シニアの健康ライフ
Slownetからのおすすめ記事(提携)

お知らせ

電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中