2019年 9月 23日 (月)

鈴木雅之、シンガーではない
ヴォーカリストとしての熟成

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「DISCOVER JAPAN III」は完結編

   今年発売された「DISCOVER JAPAN III」は、その完結編。個人史でありながら時代を少し広げている。古くは昭和22年に発表された、J-POPの父、服部良一作曲、霧島昇が歌った「胸の振り子」から60年代、坂本九「涙くんさよなら」、70年代、RCサクセションの「スローバラード」やチューリップの「青春の影」、80年代、森進一が歌った大滝詠一作曲、「冬のリビエラ」、90年代、井上陽水「少年時代」やちあきなおみ最後のシングル「紅い花」、小沢健二の「ラブリー」と幅広い。自分の原点、先輩、同志、後輩と世代を超えた思い入れのある曲を自分の色に染め上げている。

   彼がソロデビューしたのが86年。デビュー曲の「ガラス越しに消えた夏」は、シンガーソングライター、大沢誉志幸の作品だった。その後もプロデューサーに山下達郎や小田和正を迎えるなど、シャネルズ・ラッツ&スター時代とは違う音楽の幅を広げていった。それも思い付きではなく、小田和正はオフコースでデビューした時にシングル盤を買いに行った、という出会いがあり、山下達郎は中古盤屋で顔を合わせるオールデイズマニア同士、更に、鈴木雅之はシャネルズでデビューする前にやはり山下達郎の師である大瀧詠一のアルバムに参加している。いずれもそんな音楽的体験にもとずいた人選だったことに気づかされたのは、かなり時間が経ってからだ。彼の日本のポップミュージックや大衆音楽へのこだわりが結集したのが、「DISCOVER JAPAN」シリーズだった。

   先日、11月12日、中野サンプラザでツアー「DISCOVER JAPAN III」を見た。

   アルバム「DISCOVER JAPAN  III」を軸にして自らのキャリアを網羅し、更にアルバムに収録されていない曲も披露する。意外な曲も交えつつじっくりと聴かせる構成とイメージとはかなり違う饒舌なトーク、ファンサービスを怠らないエンターテイナーぶりを発揮、ザ・ヴォーカリストの熟成されたキャリアならではの濃密なステージを展開していた。

   ソウルミュージックと歌謡曲、洋楽と邦楽、流行と庶民生活。いつの時代も洋楽的な要素を取り込みつつ日本の音楽として消化してきたのが日本のポップミュージックの歴史だった。「DISCOVER JAPAN」シリーズは、鈴木雅之がその申し子であることを再認識させてくれたのだった。

(タケ)

タケ×モリ プロフィール

タケは田家秀樹(たけ・ひでき)。音楽評論家、ノンフィクション作家。「ステージを観てないアーティストの評論はしない」を原則とし、40年以上、J-POPシーンを取材し続けている。69年、タウン誌のはしり「新宿プレイマップ」(新都心新宿PR委員会)創刊に参画。「セイ!ヤング」(文化放送)などの音楽番組、若者番組の放送作家、若者雑誌編集長を経て現職。著書に「読むJ-POP・1945~2004」(朝日文庫)などアーテイスト関連、音楽史など多数。「FM NACK5」「FM COCOLO」「TOKYO FM」などで音楽番組パーソナリテイ。放送作家としては「イムジン河2001」(NACK5)で民間放送連盟賞最優秀賞受賞、受賞作多数。ホームページは、http://takehideki.jimdo.com
モリは友人で同じくJ-POPに詳しい。

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