2024年 4月 20日 (土)

小麦粉の包容力 東海林さだおさんが「チームかき揚げ」に銅メダル

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

読んで幸せ、東海林節

   おそらく東海林さんは、初めからカーリング女子(LS北見)に感じた心地よさを書きたかったのだろう。なにしろ、テレビで試合を見続けていたのである。

   ではどんな仕掛けで、「食」という自陣に取り込むか、どんな食べ物や料理に例えるか。無限の引き出しから手練れが選んだのが、かき揚げだった。冒頭の「天ぷらvsフライ」は軽いファンサービスで、本題との関係は薄い。

   花形のスケートやスキーに比べ、五輪以外では注目されない地味なスポーツ。役割分担とチームワークが重視されるカーリングを料理で表現すれば、やはりかき揚げになる。他のメニュー、例えば五目ソバや八宝菜では一体感に欠けるというものだ。

   カーリング女子=かき揚げという一見強引な比喩が、あちこちに埋め込んだレトリックで滑らかにつながる。最たるものは、裏方に徹した主将、本橋麻里さんに小麦粉役を振ったことだろう。

「小麦粉でまとまったLS北見というかき揚げの味を、われわれは今回の平昌オリンピックで味わったのだと思う」

この作者の随筆は、読む人を幸せな気持ちにさせる筆致で一貫している。これに本業のマンガ風スケッチを添えることで、比類なきホンワカ感を醸し出す。食の話題に限らず、コラムや随筆でいちばん大切なのは「共感」の要素だと改めて思った。 読み終えて、思わず「そだね~」と呟かせる力である。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

姉妹サイト

注目情報

PR
追悼
J-CASTニュースをフォローして
最新情報をチェック
電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中
カス丸

ジェイキャストのマスコットキャラクター

情報を活かす・問題を解き明かす・読者を動かすの3つの「かす」が由来。企業のPRやニュースの取材・編集を行っている。出張取材依頼、大歓迎!