妻の夫に対する「ドメスティックバイオレンス」(DV)はなぜ起こるのか。その原因とは...。2018年5月21日放送の情報番組「あさイチ」(NHK)で、「妻のDV」を特集した。妻が夫に暴力をふるう原因を探っていく中で、夫にも原因があるとの見解に、ネット上で疑問の声が上がっている。「スネを蹴る」「リモコンで叩く」内閣府が18年3月に発表した「男女間における暴力に関する調査報告書」によると、男性の約5人に1人(19.9%)は、配偶者から被害を受けたことがあるという結果になった。番組はいくつかの夫婦を取材した。夫に暴言を吐いてしまうという30代女性は、仕事の影響で休みに出かける約束が果たせなくなった時の態度が「申し訳ない」という感じではなく、「仕事だから断れない」「どうすればいいの?」といった感じが頭にくると話す。やめたいとは思っていても、数か月に一度、「スネを蹴る」「リモコンで叩く」などの暴力的行為に及ぶこともあるという。こうした妻の怒りにすぐに夫は折れて謝るが、妻は「俺が謝ればいいんでしょ?」という感じで謝ってくる夫の態度がまた気にくわないと話す。社会病理学を専門とする立命館大学教授の中村正さんは、こうした男性の思考を「折れイズム」を呼んでいるという。男性はとりあえず謝っておこうという意識が働き、結果的にそれが女性と積極的に話し合いをしようとしない、気持ちに寄り添っていないということになるのだと説明した。中村さんはまたこうした夫婦は、事実や情報を客観的に正確に伝える話し方「レポートトーク」と、聞き手との信頼関係を構築する話し方「ラポートトーク」のバランスがよくないと話す。妻への気持ちに寄り添ったラポートトークが足りていないのではないかとの見解だ。妻が暴力をふるっている事実があるのに...DV加害者更生に取り組むNPO法人の理事長・栗原加代美さんは、こうした加害者の妻の共通心理として「承認欲求」があると説明する。なんで自分をもっと見てくれないのか、愛してくれないのかと女性は感じているのだという。スタジオゲストの西川史子さんや潮田玲子さんも、こうした女性の心情には一定の理解、共感を示していた。番組は途中、20代男性から届いたFAXを紹介した。それは、「妻が暴力をふるっているという事実があるのにもからわらず、男性側に主に原因があるというような雰囲気に疑問を感じます」といった内容だった。これにMCの博多大吉さんは、「妻のDVがなぜ起こるのかという特集なので、原因を探ると男性に原因があるのではないかと思ってしまうかもしれませんよね。原因はもちろん妻にもあるということで...」とコメントした。FAXを送った20代男性のような疑問の声は、ツイッター上でも散見される。「『そもそもの原因は夫』みたいな意見が出るのモヤッとする」「結局妻をDVに走らせる夫が悪いという論調で驚いた」「妻のDVは夫に原因がある、という含みを残す自体おかしいと思う」またツイッター上では、被害者男性に対する同情的な意見が多く見られ、番組での取り上げ方を残念がる声も目立った。「メインターゲットが女性なのはわかるけど、あさイチは被害者側に寄り添う番組であって欲しかったよ...」「妻の怒りの原因はこうだああだなんて放送するより、この怒りのコントロールやDVを解決するにはという所をもっと長く詳しく放送するのが良かったのに」一方で特集が、「『妻から夫へのDV』が存在すること自体を知ってもらう機会になった」とのツイートもあったが、記者が確認した限りこのような賛同意見は少数だった。
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