2024年 4月 25日 (木)

郡山ワンステップフェスティバル
青年が私財を投げうった空前イベント

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2001の再会と21枚組のBOX

   ただ、どんなに手弁当であっても2万人以上が集まる長期の野外コンサートは誰もが未経験。途中、豪雨で中止になり、出演者が他の日に急遽振り替えられるというトラブルもあった。主演者やスタッフの宿泊代もかかる。収支は大赤字。5千万円以上を主催者の佐藤三郎が負担せざるをえなかった。

   彼にその後の話を聞いたのは25年後。雑誌「AERA」の中の人物インタビュー記事「現代の肖像」を書いた時だ。彼は、会場に残されたゴミの処理に一週間かかったと語ってくれた。最終的に所有していた土地や家を売り払い街を離れて暮らしていた中で「あのイベントをやらなければ良かった」とは口にしなかった。そして2001年、須賀川市で行われた福島の未来をテーマにした「うつくしま未来博」で「ワンステップフェスティバル2001」を開催、当時のスタッフや出演者の再会の場を提供していた。

   郡山ワンステップフェスティバルは、その後、何度となく再評価の光が当てられている。2004年には当時は行方不明になっていた録音テープを使った4枚組ライブ盤、2013年には映像も含めた5枚組BOXが発売、去年の年末には出場者全41組のうち37組の演奏曲全曲を収めた膨大なライブアルバム21枚組BOXも出た。

   協賛する大手スポンサーもなければ後援するメディアもない。業界とは何の接点もない地方都市の青年が全財産を投げうって行った空前のロック・フェス。それは行う側、出る側、そして見る側のそれぞれにとってウッドストックがピークとなった60年代後半のフラワームーブメントやロック幻想による日本で最も象徴的な出来事でもあったのだと思う。

   佐藤三郎も石坂敬一もすでにこの世にいない。会場にいた延べ数万人の観客の記憶と残された音源が、「夢の証し」としていくつもの教訓とともに語り継がれてゆく。

(タケ)

タケ×モリ プロフィール

タケは田家秀樹(たけ・ひでき)。音楽評論家、ノンフィクション作家。「ステージを観てないアーティストの評論はしない」を原則とし、40年以上、J-POPシーンを取材し続けている。69年、タウン誌のはしり「新宿プレイマップ」(新都心新宿PR委員会)創刊に参画。「セイ!ヤング」(文化放送)などの音楽番組、若者番組の放送作家、若者雑誌編集長を経て現職。著書に「読むJ-POP・1945~2004」(朝日文庫)などアーテイスト関連、音楽史など多数。「FM NACK5」「FM COCOLO」「TOKYO FM」などで音楽番組パーソナリテイ。放送作家としては「イムジン河2001」(NACK5)で民間放送連盟賞最優秀賞受賞、受賞作多数。ホームページは、http://takehideki.jimdo.com
モリは友人で同じくJ-POPに詳しい。

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