2018年 11月 20日 (火)

寒がりの王様に親愛の情を込めて ミヨーの木管五重奏「ルネ王の暖炉」

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   今年の日本の夏は暑い暑い、といっていたのに、9月も第2週になると気温が急激に低下し、肌寒さを覚えるぐらいになって、急に秋の訪れを感じるようになりました。今日は、肌寒さを感じる秋に、思わず暖かくなってしまう、木管五重奏曲を取り上げましょう。

   フランス近代の作曲家、ダリウス・ミヨーの木管五重奏曲「ルネ王の暖炉」です。この曲は、もともと、ジャン・オーランシュとジャン・アヌイ、2人の脚本家が脚本を手掛けたレイモン・ベルナール監督の映画のために1939年に書かれた音楽でした。

  • エクス=アン・プロヴァンスにゆかりの深い作曲者ミヨーと『ルネ王』の肖像。似ているかもしれないが、それは気のせいである・・
    エクス=アン・プロヴァンスにゆかりの深い作曲者ミヨーと『ルネ王』の肖像。似ているかもしれないが、それは気のせいである・・
  • エクス=アン・プロヴァンスにゆかりの深い作曲者ミヨーと『ルネ王』の肖像。似ているかもしれないが、それは気のせいである・・
    エクス=アン・プロヴァンスにゆかりの深い作曲者ミヨーと『ルネ王』の肖像。似ているかもしれないが、それは気のせいである・・

お気に入りの「陽がよく当たって、体がぽかぽかする道」

   主人公の「ルネ王」とは、正式な名をルネ・ダンジューといい、15世紀に実在したフランス王家の傍系の領主で、フランス南部プロヴァンス地方のエクス=アン・プロヴァンスなどを治めていました。イタリアのナポリの王位を遺言によって継いだこともあるため、フランスでは、「王」ではないのですが、親愛の情を込めて「ルネ王」と呼ばれていました。

   エクスや出身地のロワール地方アンジェでは、サロンを主催し、芸術家を保護し、善政を行ったため、人々に親しみを持って「王」とあだ名されたようです。

   作曲者ミヨーは、そのエクス=アン・プロヴァンスの出身です。

   北部フランスとは全く違う南フランス、プロヴァンス地方は、特に夏季、太陽にあふれています。ピーター・メイルの「南仏プロヴァンス」シリーズで世界的にも有名になったプロヴァンス地方は、冬季は厳しい環境になるものの、ヴァカンスシーズンには世界中から観光客がやってきます。

   「ルネ王の暖炉」とは、文字通りの暖炉・・ではなく、そんな日光に恵まれたプロヴァンスの領主である「ルネ王」が、寒がりであった・・という物語を背景としています。彼が寒い時期エクスを散歩するときに、お気に入りの「陽がよく当たって、体がぽかぽかする道」があり、町の人々は、ルネ王お気に入りのその散歩道を、親しみと諧謔(かいぎゃく)を込めて「ルネ王の暖炉」と名付けたのです。

7曲の組曲、すべて演奏しても15分弱

   のどかな昔話的物語にミヨーがつけた音楽は、メロディーはわかりやすく、親しみやすいものでありながら、ハーモニーは、20世紀の新しさを感じさせる斬新なものでした。映画音楽から抜き出して7曲の組曲とされた「ルネ王の暖炉」は1曲1曲も短く、すべて演奏しても15分弱の演奏時間であることもあり、近代木管五重奏の中で、もっとも有名な曲となり、同時にミヨーの代表曲ともなったのです。

   木管の暖かい音色を聞いていると、なんとも暖かい気分になります。ルネ王が日向ぼっこしている様子を、プロヴァンス出身の暖かな作曲家、ミヨーが、素晴らしい曲にまとめ上げた、寒くなるシーズンに聴きたい1曲です。

本田聖嗣

本田聖嗣プロフィール
私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でピルミ エ・ プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソ ロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目CDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラ マ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを 務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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