2018年 11月 18日 (日)

ASKA、2枚のベストアルバム
愛と冒険の記憶が

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   タケ×モリの「誰も知らないJ-POP」

「ずっとベストアルバムには関心がなかったんです。今までに出たものの、全部スタッフに任せていた。今回はこの時期だから意味があると思った。こういう形は初めてですね」

   2018年10月16日に「We are the Fellows」「Made in ASKA」と二枚のベストアルバムを同時発売したASKAは、筆者のインタビューにそう言った。

   二枚のアルバムはそれぞれ違う成り立ちを持っている。「We are the Fellows」は、彼のファンが選んだ曲がランキング通りに並んでおり「Made in ASKA」は、それを踏まえて彼自身が補足的に選んだ曲を年代順に並べている。その中には他の人に書いた曲を初めて歌いなおした曲や今回のための書き下ろした新曲もある。彼が初めてソロアルバム「SCENE」を発売したのが88年。つまり30年前、そして、今年の2月に還暦を迎えた。二枚のアルバムの中にはソロ30年と人生60年という二つの時間が刻まれていることになる。

「We are the Fellows」と「Made in ASKA」(ヤマハミュージックコミュニケーションズ、アマゾンHPより)
「We are the Fellows」と「Made in ASKA」(ヤマハミュージックコミュニケーションズ、アマゾンHPより)

音楽は若い人たちだけのものじゃない

   ASKAがCHAGE&ASKAでデビューしたのは79年。ソロアルバムの発売はデビュー10年目だ。

「当時はソロを出すとグループが解散と思われる時代でしたからね。自分ではやりたいと言ってたんですけど通らなかった。他人に書いた曲を歌いなおすということではどうですか、ということで了解をもらったのが最初です。ライブもやりませんでした」

   二枚のベストアルバムにはそれぞれに特徴がある。「We are the Fellows」は、1位が91年のアルバム「SCENE II」の中の「けれど空は青」で3位が「はじまりはいつも雨」。代表曲から去年のアルバム「Too many people」収録の「東京」や「と、いう話さ」など13位まで。それぞれの時期のアルバムの曲が網羅されている。

「参りました。僕の予想の遥か上を行っていた。『はじまりはいつも雨』はきっと入らないと思ってたんです。マニアックなファン心理としては、ああいう誰もが知ってる曲は外しますよね。でも、ファンの人たちが今、ASKAを紹介するとしたら必要と思ってくれたんでしょう」

   彼が自分で選んだ「Made in ASKA」は対照的に誰もが知っているヒット曲は一曲目の「MIDNIGHT 2 CALL」くらいかもしれない。88年の一枚目のソロアルバム「SCENE」の中の曲。シブがき隊への提供曲。ニューミュージック系のアーティストがジャニーズ事務所のタレントに曲を書くはしりになった曲だ。他にはアルバムの中の曲や岩崎宏美ら女性シンガーとのデュエット曲もある。

   年代順になった「Made in ASKA」があることで見えてくるのは「ラブソングの変遷」ではないだろうか。5曲目の「はるかな国から」はいじめで自殺した少年がテーマだ。後半に並んでいる「心に花の咲く方へ」や「いろんな人が歌ってきたように」は、「愛について歌うこと」についてあらためて向き合ったような曲だ。

   男女の恋愛を歌ったラブソングから同じ時代を生きている人たちに対しての愛情。そんな流れは2017年のアルバム「Too many People」の中の「FUKUOKA」にたどり着く。

   CHAGE&ASKAではやらなかったことやれなかったこと。ソロアーティストとして新しい時代にどう対応してきたか。そうやって歌ってくる中で「愛のかたち」がどう変わってきたか。

「デビューした頃は背伸びした歌を書いてましたけど、40になるくらいかな、音楽は若い人だけのものじゃないと思うようになって。同じ時代に同じアニメに夢中になったような人たちに向けて歌を作っていきたい。自然にそうなって行きましたね」

来年2月からはツアー

   CHAGE&ASKAが日本の音楽シーンに遺した功績の一つが94年に始まったアジアツアーだ。香港、シンガポール、台北、北京、ソウル、上海。日本と同じ機材を持ち込み、事前にキャンペーンに何度も足を運び、現地の聞き手にチケットを売る。日本からのツアー動員に頼らない形で成功を収めた最初の例だろう。

   彼のソロツアーでも香港、上海、バンコク、台北、シンガポールなどで複数回のライブを行っている。日本のコンサートツアーの一環としてアジアを回るというそれまでになかった形を作り上げた。

「日本で売れているからと言ってアジアで成功すると思ったら大間違い。ちゃんと階段を上って行かないと認知してもらえません。僕らも向こうのスタッフに面と向かって、日本人は大嫌いです。でも、君たちは別なんだよなあ、って何度も言われましたから。凍り付きますよ」

   アジアツアーに同行取材した時に、その様子は何度か見ることが出来た。ソウルでの記者会見ではストレートに「歴史認識を聞かせてほしい」と聞かれることもあった。まだコンサートで立ち上がって聞く習慣がなく、警備員の制止を振り切って客席が総立ちになる光景が各地で繰り広げられた。その当時のスタッフの後輩や子供たちが今、アジアのコンサートを支えている。「Made in ASKA」の中の97年のアルバム「ONE」のタイトル曲や「ID」は、まさにそんな時代の歌だ。

   「Made in ASKA」の中の新曲「メリーゴーランド」が気になった。ディズニー風な情感豊かなストリングスに載せて歌われるのは、少年時代の記憶だ。

「年齢もあるんでしょうけど、福岡に帰ると小学校の同級生が集まって来るんです。それぞれの記憶がみんな違う。卒業文集を引っ張り出したりして盛り上がる。成功した者もいればそうとも言えない奴もいる。あの曲で言いたかったのは、俺たちは少しの間、冒険をしてきたと思えばいいんじゃないか、ということですね。今だから書ける曲を入れようと思いました」

   二枚のベストアルバムに刻まれた30年と60年。愛と冒険の記憶。彼は、今年の8月、CHAGE&ASKAのデビュー日を前にファンクラブの会報誌で今後の活動は「CHAGE&ASKAのASKAのソロ活動ではなく、ソロアーティスト・ASKAとして」と書いていた。

   11月5日からシンフォニック・オーケストラをバックにしたツアー「THE PRIDE」が始まる。来年の2月からはアルバムを携えたバンドのツアー「Made in ASKA~40年のありったけ」も発表になった。アジアでの公演もありそうだ。

   CHAGE&ASKAのデビューから40年。「愛と冒険」の旅は新しい章を迎えようとしている。

(タケ)

タケ×モリ プロフィール

タケは田家秀樹(たけ・ひでき)。音楽評論家、ノンフィクション作家。「ステージを観てないアーティストの評論はしない」を原則とし、40年以上、J-POPシーンを取材し続けている。69年、タウン誌のはしり「新宿プレイマップ」(新都心新宿PR委員会)創刊に参画。「セイ!ヤング」(文化放送)などの音楽番組、若者番組の放送作家、若者雑誌編集長を経て現職。著書に「読むJ-POP・1945~2004」(朝日文庫)などアーテイスト関連、音楽史など多数。「FM NACK5」「FM COCOLO」「TOKYO FM」などで音楽番組パーソナリテイ。放送作家としては「イムジン河2001」(NACK5)で民間放送連盟賞最優秀賞受賞、受賞作多数。ホームページは、http://takehideki.jimdo.com
モリは友人で同じくJ-POPに詳しい。

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