2018年 12月 16日 (日)

「休みは月1日強」酪農家の厳しい現状 安定的生産のために必要な労働環境改善

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   酪農指導団体の中央酪農会議(東京都千代田区)は2018年11月16日、東京・千代田区で記者向け説明会「『いま、日本の酪農を考える』 ~酪農の危機!揺らぐ牛乳の安定供給~」を開催した。

   発表資料によると近年、日本国内では特に北海道以外の地域において酪農家の離農・廃業が進み、生乳(牛乳や乳製品の原料となる、搾乳しただけの乳)の安定的な生産の継続が難しくなっている。その理由の一つが、生き物を扱う仕事ゆえの労働環境の厳しさだ。説明会では酪農に関わる有識者らが、それぞれの視点から酪農を取り巻く現状、安定供給の課題について述べた。

  • (左から)加茂牧場の加茂太郎代表取締役、北海道大学大学院農学研究院の清水池義治専任講師、中央酪農会議の内橋政敏事務局長
    (左から)加茂牧場の加茂太郎代表取締役、北海道大学大学院農学研究院の清水池義治専任講師、中央酪農会議の内橋政敏事務局長

搾乳量の調整が難しいわけ

   冒頭、中央酪農会議の事務局長・内橋政敏氏が講演に立ち、全国の酪農家を対象に行った「平成29(2017)年度酪農全国基礎調査」の結果や統計データを踏まえ、酪農経営や労働の実態について説明した。同調査によると、全国の酪農家の平均年間休業日数は約18日で、ひと月に換算すると1日強。その休みも、乳牛たちの世話を「酪農ヘルパー」に有料で代行してもらって初めて得られる。収入を削らないと休めないのだ。

   続いて、北海道大学大学院農学研究院の専任講師・清水池義治氏は日本の生乳流通構造と牛乳の商品特性の面から酪農が直面している課題について解説した。生乳は「消費と生産に特性があり、扱いづらい」という。その理由として需要と供給のピークが真逆であることを挙げ、以下のように説明した。

「牛乳は夏場に消費が増え、寒くなると減るが、涼しい気候が適している乳牛は夏になるとバテてしまい、生乳生産が減少してしまいます。一番乳が出るのは春先から冬にかけてです」

   また雌牛はいったん乳が出るようになると、作られた乳は全部絞ってやらなければ病気になってしまう。そのため清水氏は「消費が少ない時期には乳を搾らないといった対応ができず、搾乳量の調整が難しい」ことも扱いづらさの一因であり、酪農家たちの頭を悩ませている問題だと明かした。

   さらに清水氏は、牛乳の安定供給のためには、乳価と牛乳価格の見直しが必要であり、酪農経営と牛乳生産の持続可能性という面から、適切な価格水準かどうかの議論が必要であると述べた。

休日を確保できる仕組みづくりを

   説明会の最後には、酪農家を代表して加茂牧場(千葉県八千代市)の代表取締役・加茂太郎氏が登壇。「乳牛たちの搾乳やエサの管理などは決して楽なものではないが、愛情をかけただけ商品の質に表れる」とやりがいについて触れつつ、一番のネガティブポイントについては「休日の不足」とし、

「これから酪農産業に参入してくれる人を増やすためには、ゆとりのある働き方や休日の確保がしっかりとできるような仕組みにしていかなければならない」

と、酪農業全体の労働環境改善に向けた取り組みの必要性について訴えた。

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