2019年 7月 22日 (月)

「少子化対策失敗の歴史」をどう乗り越えるか

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   ■「無子高齢化(出生数ゼロの恐怖)」(前田正子著、岩波新書)

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   本年10月、消費税が10%に上がれば、すべての団塊世代が後期高齢者となる2025年を念頭に進められてきた「社会保障・税一体改革」が区切りを迎える。それを見越して霞ヶ関では、その次、すなわち団塊ジュニア世代が高齢者となる2040年を見据えての議論がスタートしている。

   2040年時点の高齢化率は35%。3人に1人超が高齢者となる社会が到来する。しかし、もっと驚くことは生産年齢人口(15歳~64歳)が現在よりも1700万人も少ない6000万人程度にまで減ってしまうことだ。

   このまま推移すると、なお需要が増える医療・福祉の担い手の確保が覚束なくなることが懸念されている。

   こうした事態は、戦後一貫して進んできた「長寿化」とともに、長年にわたって続く「少子化」によってもたらされたものだ。

   本書の著者は、少子化・子育てについて、長年にわたり研究を続け、一時期、横浜市副市長として子ども行政の第一線でも活躍してきた経歴を持つ。本書では、「少子化対策」に失敗してきた日本の歴史を振り返り、この状況を転換するために一刻も早く「若者への就労支援と貧困対策」を中心に抜本的な対策を講じるべきと説く。

   まさに、長年、関わり続けてきた者だからこそ書ける、憂国の書である。

人口が減るとミカンが食べられなくなる!?

   昨年12月に公表された2018年の人口動態統計では、出生数は92万人、これに対し死亡数は137万人、結果として45万人もの人口が減少していると推計されている。初めて人口が減少したのが2005年だが、その時の減少人口は2万人だった。それがわずか10数年で大都市一つが1年で無くなってしまうほどの減少幅となっている。この勢いは今後、加速する。特に団塊世代が亡くなり出す2030年以降は、毎年70万人~90万人の規模で減っていくと見込まれている。

   本書によれば、ここ15年間で毎年500校ほどの小中高校が閉校しているという。子どもが減れば当然、働き手も減る。先般、人手不足の影響で、土曜日の郵便物の配達を廃止するとの報道があった。ファミリーレストランで24時間営業を取りやめるところも出てきている。

   農家の減少と高齢化によって、手間のかかるミカン栽培が急減し、そのうち気軽にミカンを食べることもできなくなってしまうのではないかという。水道、橋、道路といった基礎的なインフラすら維持できず、集住を余儀なくされるかもしれない。

   人口減少はまだ始まったばかり。特に評者が住む東京などは、未だ人口増が続いており、本格的な人口減は実感されていない。しかし、右肩上がりで人口が増えていた時代には想像もできなかったような事態が否応なく次々と起こってくるのだ。

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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