2019年 11月 18日 (月)

忘れがたきカンニング 山田清機さんは嫌悪しつつも攻め倒さず

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その後に待つ人生

   山田さんは前半の結びでも、灘高出身者に「彼らはいま、どんな人生を送っているだろうか」と、皮肉を込めた自問を添えている。少年期のズルが人生にどんな影響を与えたのか。その行為に、ラクして生きたいという堕落を見るか、ここを凌がねばという必死さや要領のよさを感じるか。山田さんは攻め倒そうとはしない。とことん突き詰めることもない。どちらも青春の1ページとして、ユーモアを交えて淡々と記すのみだ。

   秀逸なのは〈4 だと思う〉の解答だろう。山田さんに睨まれ、切羽詰まったKさんの心情は察するに余りある。しぼり出すような〈だと思う〉...だと思うのだ。

   山田さんがこれを45年ほど覚えていたのは、付け足した4文字に「人生の真実」が宿るからかもしれない。カンニングという、ズルとウソの中に光る本音である。

   Kさんのその後の人生は、虚実のいずれだろうか。いや、人生はそんな単純なものではない。いい人になったり、悪い奴になったり。彼女も、こっそり盗み見た「4」と、恥じらいつつ書き加えた「だと思う」の間を日々行ったり来たり...ではなかろうか。

   そう。あなたや私と同じように。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)

コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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