2019年 11月 15日 (金)

言いたいことから短く 松本和也さんが授ける「伝わるプレゼン」の極意

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   東洋経済(5月18日号)の「必ず伝わる最強の話術」で、トーク術のコンサルタント、松本和也さんが「論理性にこだわりすぎないで」と訴えている。

   NHKのアナウンサーだった松本さんは、中途退職して起業、音声表現全般のコンサル業を営んでいる。この週刊経済誌の読者にはプレゼンの機会があるビジネス関係者も多く、話し方についてのアドバイスは需要があるのだろう。連載は上記で17回を数える。

「社長、役員などのプレゼンテーションやスピーチを聞いていて、いつも思うことがあります。それは『頭のいい人ほど話がわかりにくくなる』傾向にあるということです」

   松本さんによると、会社を代表する立場で話す人たちは、おのずと慎重な物言いになる。安全第一の守勢ゆえ、こんな思いに駆られるそうだ。

(1) 前提条件や例外があることを先に断っておきたい
(2) 結論に至る過程を論理的に、順を追って説明したい
(3) 最後は「~とも考えられる」などで断定を避けたい

   ...その結果「なかなか本題や結論が言えない」ことになる。悪例はこんな感じである。

〈これからご説明する提案ですが、なぜこれが必要なのかについて業界の概要を説明させていただき、我々が描く解決手段を紹介します。まずは弊社の簡単なご紹介を...〉
  • プレゼンを聞いている人たちの気持ちは…
    プレゼンを聞いている人たちの気持ちは…

聞き手は気が短い

「誠実でしっかりした説明をしようとしているのはわかります...しかし、プレゼンを聞いている方の気持ちになってください...(聴衆は)直後には消えてしまう『音声』から主に情報を得ます。膨大な情報をすべて頭の中に残しておける人はどれくらいいるでしょうか」

   では、どうすればいいのか。松本さんはこう助言する。

「例外や前提はいったん置いておき、まずいちばん言いたいことを短く話しましょう。次にざっくりとした概略。詳細な情報は、その後で十分です」

   たとえば、こんなふうに。

〈ご提案したいのは○○というサービスです。業界の課題である□□を解決するもので、導入により△△が実現します。なぜ必要なのかをこれからお話しします〉
「文書ならば自分のペースで読み、わからなければいつでも見直せます。一方で口頭による説明は、発した瞬間に消えていきます。だからこそ、最も大切なものから順番に、細かく区切って『わかる!』という思いを積み重ねていってもらうしかないのです」

   そして松本さんの結論は、以下の通りである。

「聞き手は気が短い。これを前提に話を組み立てるようにしましょう」

つい横道にそれて...

   ごくたまにだが、私も大勢を前に話すことがある。最近のテーマは「どう書けば伝わるか」みたいなことで、それを口頭で伝授させていただく。思えば、「どう話せば伝わるか」を文字で説明している松本さんとは、まるで逆をやっているわけだ。スピーチは素人だから、話術のプロによる指南はありがたい。欠かさず拝読している。

   今回の「いちばん言いたいことから短く話す」という鉄則はよくわかる。新聞記事のイロハも同じ。いつ、どこで、だれが、いかなる理由から、なにを、どのようにしたか、いわゆる「5W1H」を過不足なく「逆三角形」で、つまり重要な順に並べて記すことである。

   実は当コラムの1文目も毎週、ある定型を守っている。つまり...[A(雑誌名)のB(連載名)でCさん(著者名)がD(テーマ)について書いている]...といった具合だ。

   話す場合も同様で、要点を簡潔に連ねていけばいい。そういった理屈は理解しているつもりだが、いざ聴衆を前にすると舞い上がり、ふと横道にそれ、ふらふらと路地裏に入り込み、うまくいかないことも再三だ。開口一番、対面する善男善女の心にグサリと錨を打ち込むようなパフォーマンスを、一度くらいやってみたいものである。

   次あたり、「こんにちは。えー講演の聞き手というものは、皆さん気が短いと申します」と始めてみようか。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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