2019年 12月 16日 (月)

ひとりの時間 川上未映子さんは、言語ではなく記憶と戯れる機会とみる

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作家は孤独の専門家

〈もともと小説家になるというのは孤独の専門家になるようなもんですけれど...〉

   こう言い放ったのは、今年で没後30年となる開高健である。

   大作家から私のような者まで、およそ物書きは独りでいることが多い。向かい合う相手といえば、かつては原稿用紙、いまはパソコンという人が多いだろうか。いずれにしても、ほぼ四六時中「ひとりの時間」である。

   開高と同じ芥川賞作家の川上さんも、孤独についての考察を自身の実感から紡ぎ出しているようだ。なにしろ、1枚の写真や本の1行からひとりの時間が立ち現れる、というのである。興味深いのは「齢を重ねると孤独は怖くなくなる」という一節だ。

   半世紀以上も前、ヨットで太平洋を単独横断した堀江謙一さんは、94日間の冒険をこう総括した。〈孤立と違い、孤独は慣れるものらしい〉...天声人語にも拝借した名言だ。

   孤独に過ごす「ひとりの時間」は特殊でも異常でもなく、生き続けるための営みであり、だからこそ言語ではなく、記憶と戯れようという川上さん。いわば、精神的な睡眠のススメとでも言えようか。

   誰かと24時間つながっていたい寂しがり屋が増えているようなので、私も改めて強調しておきたい。コミュニケーションだけが人生ではないと。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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