2019年 11月 23日 (土)

71歳・泉谷しげる、全身創痍の 「全力6時間ライブ」語る

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   実を言うと、これから触れようとしているライブは見ていない。毎年、足を運んでいるBEGINの「うたの日」の取材が入っていて沖縄に行っていた。その時の模様は以前この欄でも紹介したとおりだ。

   でも、自分が見たかどうかに関わらず伝えることに意味があるライブも少なくない。この日はそういう日でもあるのだと思う。

   2019年6月30日、泉谷しげるは渋谷のライブハウス「duo MUSIC EXCHANGE」で「全力6時間ライブ」を行った。13時から20時半。休憩時間を含まない実質6時間15分。1971年にデビューしたエレックレコードから歴代5社にまたがるレコード会社の作品と新作アルバム「スキル 栄光か破滅か!」の曲までの61曲で48年間に渡るヒストリーを辿ってみせた。

   1948年生まれ。今年71才。それがどれだけ過酷なことかは容易に想像がつく。

   彼に話を聞いたのは、ライブの三日後だった。

  • 「スキル 栄光か破滅か!」(泉谷しげるさんの事務所提供、以下同)
    「スキル 栄光か破滅か!」(泉谷しげるさんの事務所提供、以下同)
  • 北九州のミクニワールドスタジアムで
    北九州のミクニワールドスタジアムで
  • 70代の熱演
    70代の熱演
  • 「阿蘇ロックフェスティバル2019 in北九州」
    「阿蘇ロックフェスティバル2019 in北九州」

70には見えません、とは言われたい

   「身体、痛いですよ(笑)。ようやく起きられるようになった。やってる時にもこれはもう本当に駄目だな、歌えないなと思う時も何度かあったからね。後半の『翼なき野郎ども』から『風もないのに』あたりは死ぬかと思いました。でも、苦しい時ほど余裕のある顔を見せろ、みたいなね。そうすると直るんですね。気の持ちようというのはよく言ったもんです」

   ライブは三部構成、「翼なき野郎ども」は三部の10曲目。通算48曲目。「風もないのに」は55曲目。マラソンでいえば最後の坂、胸突き八丁という感じだっただろう。

   「さすがにきつくてちょっと休んで、ニコニコしてお前らも休め、休めば出来るんだとちょっと客をいじってね(笑)。そうすると苦しくないんですよ。身体は苦しいんだけど、精神が苦しくない。集中しなきゃいけない、じゃなくて集中しなきゃいいんだよ、という余裕感が出る。余裕ですよ。自分が一番欲しかったものが手に入りましたね。悲壮感、全然ない(笑)。テレビが撮っててくれたんだけど、悩んでたり苦しそうにしてるシーンとか全くないから、使えないんじゃない(笑)」

   新作アルバム「栄光か破滅か!」は、5月11日、71才の誕生日に発売になった。

   「制作に三か月かけたけどレコーディングは三日」という全9曲。言葉を放り投げるような小節の効いたボブ・ディランを思わせる歌い方を基本にスイング・ジャズやレゲエも織り込んだ「泉谷節」は健在だ。SF的なイラストレーションやアートを言葉にしたような時代観は彼流の黙示録に聞こえる。

   「ロックンロールでございます。フォークでございます、ということで音楽はやってきてないですから。色んな音楽が好きだったわけで、そういう音楽に敬意をこめてますね。見栄かもしれないけど、新しいものを作るということにはこだわりたい。70だからというのはないですね。70には見えませんね、ということだけは言われたい(笑)。今までの日本人のあり方で、一番よくないのは、『年甲斐もなく』という言葉ですよ。じいさんばあさんになっても若い恰好すればいいじゃん。潜在的には今でもそういう年寄りとの戦いかもしれない。実は年寄りって新しいもの好きなんですよ。スマホだってパソコンだっていじれるじゃん。俺なんてまだガラケーだぜ(笑)」

知られていないチャリティー活動の広さ

   泉谷しげるにはいくつかの顔がある。

   70年代には「春夏秋冬」や「春のからっ風」などの代表曲で知られるフォークシンガーの草分けであり、小室等・吉田拓郎・井上陽水とレコード会社を設立した頃は新しい時代の到来を告げる立役者の一人だった。

   80年代はバンドを従えて過激なライブを展開するロッカーであり、90年代以降は、個性的な俳優としての分野も広がってきた。その一方で鮮烈な色彩感のSF絵画やイラストを40年間描き続けている。映画美術で受賞したこともある。アート展はすでに定着している。

   そうした中で意外と知られてないのが「チャリティー活動」だろう。

   93年の「奥尻島地震(北海道南西沖地震)」や94年の「長崎・普賢岳噴火」(噴火自体は91年)、95年の「阪神・淡路大震災」などに際し、吉田拓郎・小田和正らに呼び掛けて「スーパーバンド」を結成するなど積極的に行動してきた。「街おこし」というのも彼が行っている活動の一つだ。

   9月29日、ミクニワールドスタジアム北九州で「阿蘇ロックフェスティバル2019」が行われる。

   「大事なことは風評被害との戦いですから。マスコミはシャッター通りとそこばかり取り上げるけど、住んでいる人は元気ですよ。そういう人たちのためのイベントですね。この間、天草でやった時もシャッター通りが人で埋まってましたよ。マスコミもエンターテインメントに関心があるなら、人を叩くばっかりじゃなくて、そういうことをすべきじゃないの」

   「阿蘇ロックフェスティバル」は、2015年に始まり、去年は一万人を集めている。ただ、今年は大雨で会場周辺の整備が整わず県外開催となった。

   被災した現地だけではなく他の地域を巻き込んでゆく。95年の阪神・淡路大震災の時は全国でフリーライブ「お前ら、募金しろ」を行い、締めくくりの会場は東京の日本武道館だった。

   北九州市での開催も地元やスポンサーとの交渉に自分で出向いて行った結果だ。

   「こういう交渉は若い奴には無理です。みなさん自分のファンなわけですよ。行くと若い時、見てましたという、同じ時代に生きてるやつらが役職についている。お前ら、偉くなりやがって、予算付けろって(笑)。みんな目をキラキラさせてる。こんな上司初めて見ましたって部下の女の子が笑ってますよ。ファンに会いに行くようなもんです(笑)」

   今年の「阿蘇ロックフェスティバル」には、ももいろクローバーZ、竹原ピストル、AK-69、KEYTALK、シシド・カフカらが決まっている。

   8月はそこに向けて全国のライブハウスで「泉谷しげる全力ソロライブ」が組まれているという「ライブの夏」だ。

   「お調子者かもしれないけど、もし、時代を作った側の人間と世間に思われているとしたら、やっぱり動かす側にいないといけないと思うわけです。そういう気持ちはずっと持っていたい。ライブはもっと回りたいんだけど、スケジュールが取れない。テレビの闇営業とかあるからね(笑)」

    若者文化の立役者たちが、どんな年の重ね方をしていくのか。「エンターテインメントは自由でなければいけない」という彼の存在感は若い頃の比ではない。

(タケ)

タケ×モリ プロフィール

タケは田家秀樹(たけ・ひでき)。音楽評論家、ノンフィクション作家。「ステージを観てないアーティストの評論はしない」を原則とし、40年以上、J-POPシーンを取材し続けている。69年、タウン誌のはしり「新宿プレイマップ」(新都心新宿PR委員会)創刊に参画。「セイ!ヤング」(文化放送)などの音楽番組、若者番組の放送作家、若者雑誌編集長を経て現職。著書に「読むJ-POP・1945~2004」(朝日文庫)などアーテイスト関連、音楽史など多数。「FM NACK5」「FM COCOLO」「TOKYO FM」などで音楽番組パーソナリテイ。放送作家としては「イムジン河2001」(NACK5)で民間放送連盟賞最優秀賞受賞、受賞作多数。ホームページは、http://takehideki.jimdo.com
モリは友人で同じくJ-POPに詳しい。

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